(…「【ついついママ目線】『映像研には手を出すな!』2/国民的アニメに描かれる“さりげなくバイアスのかかった女性像”への不快感)
【ついついママ目線】『映像研には手を出すな!』2/3
大ヒット作である細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』だが、そもそも主人公たちが避妊をしないことが気になって仕方なかった。「避妊していたから子どもはできませんでした」だと話が5分で終わってしまうが、冗談は抜きにしても、避妊をしたけど失敗したというエクスキューズがあってしかるべきだろうと本気で思う。
おおかみおとこだから知識がないというなら、ヒロインの花の方から切り出してもいいじゃないか。子どもも見る作品だからというなら、あのベッドシーンはどうなんだ?と思うし、だからこそ避妊について自然なこととして描いた方がいいんじゃないのかと思う。ヒロインのとんでも子育てについても物申したいところだが、まずは女性を守る避妊をしないのが当然のように描いて、結果的に妊娠・出産したヒロインがワンオペ子育てで大変な目に遭ってる姿を美談として描くのは不快を通り越して憤りも感じる。
それより筆者がゾッとしたのは、みんな大好き『崖の上のポニョ』に登場するポニョのお母さん、グランマンマーレだ。めちゃめちゃ大きくて、実はめちゃめちゃ巨乳で、夫であるフジモトにとってももはや妻ではなく偉大なる母。
いったい宮崎駿監督は女性をなんだと思っているのだろうか? 逆境にも決して負けないかわいい少女か、バケモンのように巨大でなんでも受け入れる全能の母親か、非常に両極端。したたかに地味に生きる等身大の女性には魅力を感じないのだろうか? 不快も憤りも通り越して呆れてしまう。
こういった男性にとって都合のいい歪んだ女性像が、国民的な大ヒット作でシレッと描かれて、作品を見る多くの人たちの深層意識にヌルっと刷り込まれてしまうのが不快だし、怖いと感じる。子どもたちは、そういったバイアスがかかっていると気づかずに、これが自分たちの生きている世界の基準として受け止めてしまうんじゃないかと心配になる。
それらに比べると、『映像研には手を出すな!』のヒロインたちは男性たちにとって都合のいい歪んだ女の子たちではない。むしろメカなどに長けていて一般的に男性が得意とする分野をおびやかしているかもしれないし、クリクリお目々でかわいい声でもなくて媚びる要素ゼロの女の子たちだ。そんなヒロインたちが、ただただ自分たちのために自分たちの好きなことに一生懸命邁進する姿が見ていて気持ちいい。
アニメにもっとこういうキャラクターや作品が増えるといいのにと思う。アニメというメディアは子どもたちも目にする機会が多いのだから、キャラクターたちももっともっと多様化しても良いのじゃないだろうか。(文:入江奈々/ライター)
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