新型コロナウィルスの感染拡大でアメリカの映画館が閉鎖され、新作映画は公開が延期されたり、デジタル配信が前倒しされている。通常であれば劇場公開開始からデジタル配信までの期間を3ヵ月空けなくてはいけないルールだが、劇場公開と同時にデジタル配信する作品も登場した。
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アニメ『トロールズ ミュージック★パワー』で、全米で4月10日に「プレミアムVODレンタル」(48時間のレンタルで19ドル99セント)が始まった。現地時間の4月28日、ユニバーサルは『トロールズ』が配信後約3週間で1億ドルを売り上げたと発表した。1億ドルで大ヒットといわれる興行収入に匹敵する数字だ。
NBCユニバーサルのジェフ・シェルCEOはウォール・ストリ−ト・シャーナル紙のインタビューで「『トロールズ』の結果は期待を上回るもので、プレミアムVODの可能性を証明してくれた。映画館が再開後も、新作を劇場公開と同時にデジタル配信する」と語った。
実は前作の興行収入1億5370万ドルには届かなかったものの、ユニバーサルの取り分は大きい。映画会社側のVODの取り分は売り上げの80%といわれ、『トロールズ ミュージック★パワー』は8000万ドルに相当する。一方、興行収入では映画会社の取り分は半分なので、1作目の取り分は7700万ドル。映画会社にとってVODの利益率は高い。
NATOよりも強い態度に出たのが、全米最大のシネコンチェーンAMCだ。今後ユニバーサル作品を上映しないと発表した。AMCのアダム・アロン会長兼CEOはユニバーサル・フィルムド・エンタテインメント・グループのドナ・ラングレイ会長に書簡を送り、「(新作を劇場公開と同時にデジタル配信する)リリース方針の変更は受け入れがたい。アメリカ、ヨーロッパ、中東にあるAMCの映画館全てでユニバーサル作品を上映しない」と記している。
ワーナー・ブラザースはアニメ『弱虫スクービーの大冒険』を劇場公開せずに5月15日にアメリカとカナダでデジタル配信する。レンタルが19ドル99セント、購入が24ドル99セント。元々映画会社側は劇場公開からデジタル配信までの期間を短縮するよう劇場側に求めてきた。ワーナーの動向次第では、ユニバーサルのように映画館側からの反発を引き起こしたり、映画会社のデジタル配信強化の動きが加速するかもしれない。(文:相良智弘/フリーライター)
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