イタリアやスペインをはじめ、各国で厳しい外出制限が敷かれていた欧州だが「感染者増加のピークを超えた」として、段階的に規制を緩和し経済活動を再開する動きが現れ始めた。新型コロナウイルスに感染し、一時は集中治療室に入っていたイギリスのジョンソン首相も3週間ぶりに公務に復帰。4月末に婚約者との間に第1子が誕生したことも明るいニュースとなった。
・【ロンドン通信】外出制限、少なくとも3週間延長もイギリス人は支持!?
規制緩和とは言え、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)は年内いっぱい続けるべきとの見方もある。スーパーマーケットは変わらず営業を続けてくれていて、インスタント食品は簡単に手に入るし、パソコンさえあればVODで映画やドラマを好きなだけ見られる。でもやはり外食や映画館が恋しい。本来ならぐっと日がのびて(ロンドンでの5月の日の入り時刻は20時過ぎ)、パブで仕事帰りの一杯や夜のお出掛けには最高の季節。ロンドン市民も“出前”をとったりするのだろうか?
外出制限を受けて飲食デリバリーが好調かといえば、意外にも全体的な需要は落ち込んでいる。イギリスのデリバリー業界では「Deliveroo」「Uber Eats」「Just Eat」という3社が競い合っているが、英FINANCIAL TIMESの報道によると、外出制限が始まってからランチタイムにオフィスからデリバリーを注文する人が激減し、ロンドン中心部での落ち込みが痛手になっているそうだ。家で過ごす市民はというと、ドライバーとの接触による感染への不安を拭いきれない層も一定数おり、また注文を受けるレストラン自体も、外出制限開始と同時に休業した店が多い。
そんな中、営業再開に向けて大手飲食チェーン数社が動き出した。最初に動きを見せたのはイギリス国内で約2000店を展開するベーカリーチェーン「GREGGS」や、マクドナルド・KFCなどのファストフードチェーン。いずれもデリバリーやテイクアウトのみで、まずは一部店舗・限定的メニューで営業を再開し、徐々に店舗数やメニューを通常に戻していきたい考えだ。マクドナルドは5月5日に15の店舗で、5月13日からデリバリー営業を開始すると発表した。
映画館については再開の見通しが立たないため、公開延期ではなくVOD配信に切り替えて、新作映画をリリースする配給会社も出始めた。Vertigo Releasingは4月3日に劇場公開予定だった『The Assistant(原題)』を5月1日よりVOD配信でリリースした。本作はハーヴェイ・ワインスタインがモデルとも言われる、大物映画プロデューサーの下で働く女性アシスタントを描いたアメリカ映画で、Screen Dailyによると、英VODプラットフォームCurzon Home Cinemaで週末の最多視聴記録を更新した。Focus Featuresは5月に公開予定だったダコタ・ジョンソン主演の映画『The High Note(原題)』を、5月29日よりVODリリースすると発表している。
(Sara Suzuki/London)
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