『氷の微笑』のポール・ヴァーホーヴェン監督作品『ショーガール』
公開当時はメディアや映画関係者から「低俗なポルノ」と酷評され、観客からも「不愉快」「生々しすぎる」と不評を買った『ショーガール』(1995年)という映画をご存じだろうか。ワースト映画に贈られるゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)では、95年の最低作品賞など7部門を受賞し、後に「1990年代の最悪作品賞」も受賞。主演を務めたエリザベス・バークレーのその後の女優としてのキャリアに大きく影を落とした。
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これらの批判から察するに、この映画がこれほどまでに酷く言われてしまった原因は、あからさまな性描写にあるのだろうか。それは一体どんなものでどのくらいエロイのか。エロティックなシーンで物議を醸した『氷の微笑』のポール・ヴァーホーヴェン監督作品ということもあり、期待値が高まる。
ダンサーを夢見る女性の成り上がり物語
端的に言ってしまうと、トップダンサーを夢見て地方からラスベガスにやってきた女性の成り上がり物語である。ポルノというからにはさぞかしセックスシーンが多いのかと思いきや、トップレスダンサーの話ということもあり、多いのはセックスシーンというより女性の裸、というのが正直な感想だ。
エリザベス・バークレー演じる主人公のノエミは、最初にストリップクラブからキャリアをスタートさせる。男を欲情させるなまめかしい動きで1枚1枚下着をはぎ取っていく妖艶なダンスシーン、半裸の踊り子たちがひしめき合うバックルームなど、ともかく裸、裸、裸のオンパレードだ。ラスベガスのショーのオーディションでは、プロデューサーから「オッパイを見せろ」「トップレスショーなんだぞ」と当然のように要求される。挙句の果てには、氷を持ってきて「(冷やして)乳首を立たせろ」とまで言われる始末だ。ダンサーたちはあくまで商品で消耗品。自分が成功する為なら人を踏み台にもするし時には汚い手も使う。ポルノではなく、ショービズ界のドロドロした裏側を描き出すのがこの作品の趣旨である。
エロティックなダンスに男たちは昇天
とはいえ、印象的なセックスシーンがないわけではない。ノエミが働いていたストリップクラブでは、チップをはずめばダンサーがVIPルームで膝の上に乗っていやらしく腰を振りながら疑似セックスのようなエロいダンスを踊ってくれる。見る者を興奮させ、「疑似」にもかかわらず男を昇天させてしまうほどのいやらしい動きは必見だ。
水中での豪快な官能シーンも!
そして、少しずつ成り上がりながらスターへの階段を上っていくノエミと、売れっ子ディレクター・ザック(カイル・マクラクラン)の水中セックスシーンはかなり豪快である。
2人は、ザックが住む大豪邸のプールで激しく愛を交わす。ザックに抱き付いて絶妙な腰使いで彼を骨抜きにしていくノエミ。だが興奮と快感が高まるにつれ、ザックはノエミから主導権を奪い取って反撃に出る。足を絡めて自分の身体にしがみついていたノエミの腰を掴むと自分のリズムで激しく突き始め、のけぞるノエミの頭がプールの水面に繰り返し打ち付けられる。いや、打ち付けられるというより、突かれる度に水面に上半身がバシャバシャ「沈み込む」と言った方が正しい。その動きは、ノエミの顔を目で捉えることができないほどの激しさだ。
圧巻のステージにドロドロの人間関係と見どころも多い
いざ視聴を終えてみると、ダンサーたちのステージは衣装も演出も振り付けも圧巻だし、ドロドロした人間ドラマあり、恋愛や友情ありでストーリーもしっかりしており、そこまでひどい映画とは思えない。むしろ、良く作り込まれた作品という印象だ。事実、公開当時から一定数の評価はあったし、時代を経てジワジワと本作の価値を見直す動きが高まっている。
見事な裸体を惜しげなく披露して文字通り“身体を張った演技”をしたにもかかわらず、この作品に出たばっかりにその後女優として順調にキャリアを築けなかったエリザベス・バークレーが不憫でならない。(文:春蘭/ライター)
『ショーガール』はU-NEXTで配信中
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