政治家の妻、裏の顔はスパイ! 陰謀と愛憎が交錯するスリリングなドラマ
キーラ・ナイトレイ主演『ブラック・ダヴ』
【週末シネマ】12月から配信中のNetflixオリジナルの新作『ブラック・ダヴ』はイギリス製作のスパイドラマ。劇中で描かれるクリスマスはもう過ぎてしまったが、年末年始の休暇中に見るにはちょうどいい全6話で、現代のロンドンを舞台に陰謀と裏切り、登場人物たちそれぞれの愛の物語も交錯するスリリングな展開だ。
・封印した過去が暴かれる恐怖、見事なサイコスリラー『ディスクレーマー 夏の沈黙』
まず登場するのは、『ブレット・トレイン』(2022年)などのアンドリュー・小路。クリスマス・シーズンに華やぐ街中で尾行されているのに気づき、友人たちと連絡を取り合う彼の名前がジェイソンという以外は何も明かされないまま、彼は河岸で暗殺される。
物語の中心にいるのは、キーラ・ナイトレイが演じるヘレン・ウェブだ。双子の母親で国防長官の妻。良妻賢母という表向きの顔の裏で、影のスパイ組織“ブラック・ダヴ”の一員として過去10年間、夫の情報を組織に流し続けている。国家に関わりなく、最高額を提示した者に機密情報を売る組織であり、メンバーの中にはスパイのみならず暗殺者もいる。そして殺害されたジェイソンは公務員で、ヘレンの秘められた愛人でもあったことが明らかになる。
護衛役の暗殺者をベン・ウィショーが演じる
ジェイソンの死をきっかけにヘレンの正体が危険に晒されることを恐れた“ブラック・ダヴ”は、ヘレンの護衛役として、組織から長年離れていた暗殺者サム(ベン・ウィショー)を呼び戻す。
さらに駐英中国大使の不審死とその娘の失踪事件が絡み、ヘレンとサムは政府高官や国際的な犯罪ファミリーも関わる大きな陰謀へと巻き込まれていく。ジェイソンの死の真相を探るため、そして家族を守るために、秘密を抱えながら決死の覚悟で行動するヘレン、暗殺者としての葛藤に苦しむサムの現在と過去を並行して描きながら、ヘレンとサム、ヘレンとジェイソン、サムとかつての恋人マイケルの関係も徐々にはっきりと見えてくる。
ナイトレイとウィショーが与える新鮮な魅力
ナイトレイとウィショーの相性は抜群で、旧知ならではの信頼感と遠慮なしの会話のテンポの良さが見どころだ。キレのあるアクションも披露する一方、緊迫した状況の中に突如差し込まれるのっぴきならない個人の事情との綱引きや、意外に恋愛体質という両者の共通点が単なるスパイスリラーに留まらないヒネリとなって、新鮮な魅力をもたらしている。
家族や最愛の人にも自らの正体を隠す2人の苦悩も、彼らの周囲で他人の命も自分の命も粗末に扱う人々のことも、ドライなユーモアで包みながら多面的に描く。脚本を手がけたのは平岳大主演のドラマ『Giri/Haji』(2020年/Netflixで配信中)のクリエイター、ジョー・バートン。
“ブラック・ダヴ”のボス、リードを演じるサラ・ランカシャー(TVシリーズ『ジュリア -アメリカの食卓を変えたシェフ-』2022、23年/U-NEXTで配信中)、サムを呼び寄せる上司レニーを演じるキャサリン・ハンター(『哀れなるものたち』2023年)など、ベテラン俳優たちの凄みもシリーズ全体を引き締めている。
謎が謎を呼ぶ展開と派手なアクション、見応えのある人間模様にシニカルなユーモアも交えたエンターテインメントとして一気に見られる。そして全てを知ったうえで最初からもう1周すると、さらに楽しめそうだ。シーズン2製作も決定している。(文:冨永由紀/映画ライター)
Netflixシリーズ『ブラック・ダヴ』独占配信中
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