長塚京三「公開前の評判はプレッシャーでしかなかった」主演作『敵』公開に安堵、舞台挨拶で心境語る

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『敵』
(C)1998 筒井康隆/新潮社 (C)2023 TEKINOMIKATA
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吉田大八監督「リンチ監督からこの映画を応援されてるような錯覚を覚えました」

第37回東京国際映画祭3冠受賞の映画『敵』がついに全国公開を迎えた。翌日の1月18日には都内映画館で公開記念舞台挨拶が実施され、主演の長塚京三、共演の瀧内公美、松尾諭、松尾貴史、吉田大八監督が登壇した。

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主演の長塚は、満員御礼の会場を見渡して「こういう人たちに見てもらいたいという方々で会場がいっぱいで、本当に幸せなことです」としみじみ。東京国際映画祭では3冠受賞、台湾での金馬映画賞や上海の映画祭でも大好評、アジア・フィルム・アワードでは6部門にノミネートされる快挙を果たし、長塚は「公開前の評判はプレッシャーでしかなかったです」と笑いつつ、こうして無事に公開を迎えられたことに安堵していた。

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原作にもある「春になれば花も咲いてみんなに会える」というセリフに触れて、「この作品は一度死んでみてそれで巻き返すという話のような気がする。『花咲か爺さん』のような生き方に生まれ変わっていくというラストではないかと考えると、必ずしも悲劇的な話とは思わない。新しく人生を再生することに繋がっていくのではないか」と自身の見解を話すと、見終えたばかりの観客からは大きく頷く様子が見られた。

コロナ禍に本作の企画を立ち上げた吉田監督は、「映画の撮影などできるのだろうか?と不安を抱いていた当時を思えば、このように沢山のお客さんの前で華やかな形で初日を迎えられているのは夢のよう。パッと目が覚めて5年前のベッドに戻っていなければいいな」と感慨を口にしていた。

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一方、アジア・フィルム・アワードの助演女優賞にノミネートされている瀧内は、演じた役柄について「実像なのか虚像なのかわからなくて、その塩梅をどう調整していくのかが遣り甲斐でした。大八さんが細かく演出してくれたので、とても面白い撮影でした」と回想。長塚との思い出深いシーンを聞かれると、「みんなで鍋を囲んだシーンは微妙なニュアンスを何度もやらせてもらいました。長塚さん演じる儀助の怯えた姿など新しい一面を見た気がして面白かったです」と思い出し笑い。

これに長塚も「皆さんが沢山出てくる場面で、それまで一人の撮影が多かったので楽しみました。監督の采配でとても上手くいきました」と微笑んだ。

儀助(長塚)の古くからの友人・湯島を演じた松尾貴史は、「長塚さんのような昔からの憧れの方と2人で会話する場面が訪れようとは…。いい緊張感をキープできました」と感激。長塚の自然体ぶりには驚いたそうで、「リハをやっているのに、まるで今思いついて言葉を発しているようにしか思えなかった。不思議な感覚を覚えました」とリスペクトしていた。

儀助の教え子・椛島役の松尾諭は、「大八さんは同じ役者を使わないと聞いていたので、『羊の木』に次いで2回目の出演というのは…かなり栄誉なことではないかとテンションが上がりました」と続投に喜色満面。モノクロの映像については「モニターの画からモノクロになっていて、勝手に小津の世界に引き込まれた気がする」といい、「セリフ回しもそうなるかと思いきや、長塚さんのギアも上がっていく感じで、目の前に儀助がいると思えた。引っ張られたというか、引き寄せてくださった印象です」と最敬礼だった。

また、映画の内容にちなんで「将来のためにやっていること」を発表。パリ大学出身の長塚は「フランス語をブラッシュアップしたい」と意気込むも、「冗談ですけどね」と照れ笑い。すると瀧内は「最近は海外のお仕事の話があったりするので、英語を極めたい」と語学力UPを誓い、松尾貴史も「なら僕は関西弁をブラッシュアップしたい」と笑わせた。

一方、松尾諭は「将来のために足指を鍛えています。足指を鍛えると肩や腰にもいい。俳優として立っていることは必要なので、いつまでも立っていられるよう鍛えています」と明かした。

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最後に主演の長塚は「近隣の方々に『敵』が面白かったことを伝えてくださればありがたいです」と観客に向けてアピール。本作を「ハッピーエンドの物語」と評する吉田監督は、先日78歳で急逝したデイヴィッド・リンチ監督に触れて「作曲家アンジェロ・バダラメンティが亡くなった際にリンチ監督が発した言葉をインタビュー記事で読んだ時、『敵』をハッピーエンドの物語だと考えてよかったと思えた。面識はないけれど、リンチ監督からこの映画を応援されてるような錯覚を覚えました」と述べ、改めて作品の結末を振り返った。

『敵』は現在公開中。

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