SNSでの差別発言が問題に…アカデミー主演女優賞ノミネートのトランスジェンダー俳優が炎上中

#エミリア・ペレス#カルラ・ソフィア・ガスコン#トランスジェンダー#人種差別

BBCより
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Netflixは騒動後オスカー・キャンペーンからガスコンを排除

第97回アカデミー賞で最多12部門13ノミネート作『エミリア・ペレス』で主演女優賞にノミネートされたスペインの俳優、カルラ・ソフィア・ガスコンが過去のSNSでの差別発言を発掘され、窮地に陥っている。

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ガスコンは劇中で演じた人物と同じくトランスジェンダーで、アカデミー史上初となるトランスジェンダーを公表している俳優の候補として、1月23日(現地時間)の発表時に大きな反響を呼んだが、28日に突如、同じく主演女優賞にノミネートされているフェルナンダ・トーレス(『I’m Still Here(英題)』と彼女のSNSチームが『エミリア・ペレス』の関係者やガスコンの悪口を言っていると発言して物議を醸した。

ガスコンの訴えに根拠はなく、賞レース期間中に誤情報はアカデミーの規約に抵触する可能性があるため、指摘を受けたガスコンはすぐに撤回した。だが、トーレスのファンを中心に反発が起き、彼らはガスコンのSNSを遡り、過去数年間の投稿の中から、マイノリティへの差別、オスカー授賞式を馬鹿にした投稿の数々を掘り起こし、SNSで拡散した。

2020年代になってからだけでも、ブラック・ライブス・マター運動に否定的なコメントをしたり、世界的な人気を誇るK-popアイドル・グループ「BTS」を「中国人」「彼らが写っている投稿ばかりでうんざり」と文句を言ったり、アジア系やアフリカ系の受賞者の多かった2021年のアカデミー賞授賞式のことを「アフロ・コリアン・フェスティバル」と揶揄している。

『エミリア・ペレス』は1月にゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞したが、ジャック・オーディアール監督に促されてスピーチしたガスコンは「捕えられたとしても、殴られたとしても、私たちの魂や反骨心、尊厳を奪うことはできません」とマイノリティに向けた力強いメッセージを発信していただけに、凄まじい炎上騒ぎとなってガスコンはアカウントを削除したが、脅迫や嫌がらせが殺到しているという。

2月に入ってすぐ、ガスコンはCNNでインタビューに応じたが、ここでは「もし私が人種差別主義者だったら、ゾーイ・サルダナとは共演しないでしょう」と、『エミリア・ペレス』で助演女優賞候補になった共演者の名前を挙げたが、これもまた火に油を注ぐ失言だ。

オーディアール監督は映画サイト「Deadline」のインタビューで「彼女とは話していないし、話したくもない。彼女は自滅的なアプローチをしていて、私は関われない。なぜ彼女は自分を傷つけるのか? 私には理解できない。わからないのは、なぜ彼女が親しかった人たちまでをも傷つけているのかということです」と語っている。

北米と英国で『エミリア・ペレス』を配給するNetflixは、この騒動後はオスカー・キャンペーンからガスコンを排除し、広告などに彼女の写真を載せていない。ガスコンはすでに数々の映画賞にノミネートされているが、授賞式参加のための渡航滞在やヘアメイクなどの費用を一切出さない決定も下したという。

フランス人のオーディアール監督が、スペインやアメリカの俳優を起用して撮った『エミリア・ペレス』は死を偽装し、女性になりたい願望を叶えたメキシコの麻薬王の物語。昨年のカンヌ国際映画祭で審査員賞と女優賞(ガスコンを含む主要キャスト4人)を受賞し、今シーズンの多くの映画賞で受賞が続いているが、メキシコの描写については偏見が強いという批判が寄せられている。オーディアール監督が自国のメディアで「スペイン語は質素な国の言葉、貧しい人々や移民の言葉です」と発言したことにも抗議の声が上がっている。