黒人男性初の受賞、史上最長スピーチも!? 第97回アカデミー賞で誕生した新たな記録とは

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エイドリアン・ブロディのInstagramより(@adrienbrody)
エイドリアン・ブロディのInstagramより(@adrienbrody)

ショーン・ベイカーは4つのオスカー獲得、史上初の快挙を達成

ANORA アノーラ』(公開中)が作品賞、主演女優賞など最多5部門受賞となった第97回アカデミー賞。今年も数々の新しい記録や歴史が誕生した。

・ホロコーストを生き延びた建築家の半生が伝える残酷な現実、そして今の粗暴な世界と地続きの現実味

まずは最多受賞作の製作、脚本、監督、編集を手がけたショーン・ベイカーだ。彼は同一作品で同一年に4つのオスカー(作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞)を獲得という史上初の快挙を達成した。

『エミリア・ペレス』(328日公開)で実質主人公とも言える活躍で助演女優賞を受賞したゾーイ・サルダナはドミニカ系アメリカ人として初の受賞。「私はドミニカ人の血を引く者として初めてアカデミー賞を受賞します。私が最後にはならないことはわかっています」とスピーチした。

長編アニメ賞を受賞した『Flow』(314日公開)はラトビア映画として初のアカデミー賞受賞となった。

衣装デザイン賞を受賞した『ウィキッド ふたりの魔女』(公開中)のポール・タゼウェルは、スティーブン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』(21年)で黒人男性として初のノミネートされるも受賞を逃したが、今回晴れて、黒人男性として史上初の受賞を果たした。

国際長編映画賞では、『アイム・スティル・ヒア』(8月公開)がブラジル映画として初の受賞となった。

そして『ブルータリスト』(公開中)で2度目の主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディ。彼は2003年に『戦場のピアニスト』で同賞を史上最年少(2911ヵ月)で受賞しているが、最初の2回のノミネートで2回主演男優賞を受賞したのは史上初。さらに、史上最長の受賞スピーチ(540秒)を記録した。

1943年に『ミニヴァー夫人』で主演女優賞を受賞したグリア・ガーソンの530秒をわずかに上回ったスピーチは「演じるというのはとても脆い職業です。とても華やかに見えるし、そういう瞬間もありますが、この場に戻ってくる特権を得て、私が学んだことの1つは視野を広げることです。キャリアのどの段階にいても、何を成し遂げても、全て消え去ってしまう可能性があります」と始まった。

この時点ですでに45秒間は過ぎていたが、そこから自身のスタッフたちや『ブルータリスト』のブラディ・コーベット監督や共演者たち、恋人とその子どもたちへの感謝を述べ、オーケストラが退場を促す演奏を始めると、ブロディは「もうすぐ終わります。まとめます」と演奏を制止してスピーチを続けた。

会場にいる両親への感謝を語り、「私は、戦争や組織的抑圧、反ユダヤ主義、人種差別がもたらす長いトラウマとその影響を表現するためにもう一度ここに来ました」「正しいことのために戦いましょう。笑顔を絶やさず、互いを愛し続け、ともに立て直していきましょう」と大切なメッセージで締めくくられたスピーチだが、そこに至るまではややまとまりに欠け、SNS上では「長い」「気取りすぎ」などの批判が上がった。

ちなみにブロディが2019年から交際しているのは、2017年に長年にわたる女性たちへの性的暴行やハラスメントを告発され、現在服役中の映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの元妻のジョージナ・チャップマン。名前を呼ばれて登壇するブロディが、噛んでいたガムを投げ捨てたのを受け止めようと立ち上がった様子が世界中に中継されたのも話題になった。

ブロディは彼女がワインスタインとの間にもうけた2人の子どもたちに「私をあなたたちの人生に受け入れてくれてありがとう」と語った。これを受けて、ワインスタインの弁護士は翌日に「ハーヴェイはジョージナのことを嬉しく思っていて、彼の子どもたちが当然そうであるように、愛され、大切にされていることに感謝しています」と声明を発表した。

ブロディは授賞式翌日にInstagramに動画をアップ。散歩中の自撮りで「昨夜は一睡もできなかった。この動画は短くしますね。アカデミー賞史上最長のスピーチをしたことはわかっているから」と笑い、「皆さんを愛しています。私が感謝していることをわかってくれるでしょう。笑顔でい続けて。これが、夢は叶うことを証明してくれることを、皆さんの夢が叶うことも願います。神のご加護がありますように」と簡潔にまとめた。