ダルデンヌ兄弟作などに出演、エミリー・ドゥケンヌが43歳で死去
早すぎる逝去にマリオン・コティヤールらベルギー、フランスの映画人がSNSで追悼
1999年、主演デビュー作『ロゼッタ』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞し、2022年に同映画祭グランプリを受賞した『CLOSE/クロース』(22年)にも出演していたベルギーの俳優、エミリー・ドゥケンヌが16日(現地時間)、フランス・パリの病院で43歳の若さで亡くなった。
・『その手に触れるまで』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督
ドゥケンヌは2023年に希少がんである副腎皮質がんと診断され、同年8月に緊急手術を受けた。積極的に治療を受けて2024年4月には完全寛解と診断され、翌月のカンヌ国際映画祭に『ロゼッタ』のパルムドール受賞25周年を記念して参加して明るい表情を見せた。
そして同年10月には俳優のミシェル・フェラッシと結婚10周年を迎え、「私たちがウイと言ってから10年経ちました……そして私はこれからの100年もウイと言い続けます」とインスタグラムに喜びを綴っていたが、実は8月に再発し、化学療法や免疫療法を続けていた。
自身の病状をオープンにして、メディアやSNSで発信していた彼女は昨年12月にフランスのTV番組「Sept à Huit」に出演し、「自分が予想していたほど長生きできないことは確かです」「死にたくありません。まだ43歳ですから。少なくとも80歳までは生きて、そして永眠することを夢見てきました。それが私の求めていることです」と語った。
今年2月4日(現地時間)はインスタグラムに「今日は世界対がんデー(World Cancer Day)です」と投稿。「13日ぶりに今日退院するので、忘れるところでした…なんて厳しい戦いなのか! 選んだわけじゃないのに……いくつかの単語を書くだけでも膨大な労力がかかります…」と辛い状況を明かしながらも、新年の挨拶への返信ができていないことを詫び、家族や友人、病院のスタッフへの感謝を述べ、「私のように意に反して闘っているすべての人に愛をこめて。体調には気をつけて」と綴っていた。
10日後のバレンタインデーには夫とのツーショット写真に「毎日あなたがそばにいてくれてなんて幸運でしょう」「愛した、愛してる、そしてこれからも愛します」などと添えたのが最後の投稿となった。
デビュー当時から彼女のエージェントを務めてきたダニエル・ガンは「3週間前までエミリーは、回復できると信じていました。私たちも皆、彼女は切り抜けるだろうと思っていました。でも最後の化学療法も免疫療法も効かなかった。彼女は信じられないほど勇敢でした」と明かした。
17歳だった彼女を見出したダルデンヌ兄弟はラジオ局「RTL」の取材に「エミリーは生きる喜び、情熱そのものでした」「本当に若すぎます。まだやることがたくさんあったのに」と悼んだ。
日本公開作は少ないが、鮮烈なデビュー以来コンスタントに映画やTV出演を重ね、『ジェヴォーダンの獣』(01年)や『天国でまた会おう』(17年)などに出演し、『ラヴ・アフェアズ』(20年/映画祭上映)でセザール賞助演女優賞を受賞した。
フランス、ベルギーの映画人たちからは、早すぎる逝去に哀悼の言葉が寄せられている。
マリオン・コティヤールは昨年5月のカンヌ国際映画祭のレッドカーペットでのエミリーの写真に長文の追悼を綴った。
「親愛なるエミリー、私たちが一緒に共有したものを私は永遠に大切にします。私はあなたのことをすぐに好きになったし、再会するたびに感動と喜びを感じました。あなたの笑顔、あなたの優しさ、あなたの存在。素晴らしい魂で崇高な人間、そして偉大な才能の女優。あなたはそれを知っていました。私があなたに伝える必要があったから。あなたは私にとって、これまでも、そしてこれからも尽きることないインスピレーションの源です。(中略)今日、私は映画のセットにいるけれど、あなたのために演じます。大好きです。寂しくなります。美しい旅を。あなたの光は輝き続けるでしょう。あなたの家族全員を強く抱きしめます」。
同じく長文で追悼したのはジュリエット・ビノシュ。
「最後にすれ違ったのはカンヌ映画祭でしたね。あなたは与えられたどの瞬間も生きていて、自分自身を光として差し出し、人生のあらゆる煌めきを味わい尽くしていました。
車の中でのあなたの長いトラベリングショット、歌っているのは誰? 歌を聞くのは誰? どの映画のことだったか思い出せないけれど、はっきり刻み込まれているのはあなたの真実と、あらゆる瞬間におけるあなたの存在。あなたにそれを話したことがあった。私たちは何かを言ったことを絶対に後悔しない。これを言うこと、それが私たちを救う。人生のために、他者のために、、他者に証言するために。
こんなにもたくさんの愛を持って、自分自身をさらけ出してくれてありがとう。あなたは多くの誠実さ、素朴さ、共有された愛を私たちに教えてくれた。望んだわけでもないのに、あなた自身であることで、私たちに教えてくれて、試練の中の模範になりました。光の愛の中に入って、あなたのミシェルが言うように」。
イザベル・ユペールは、おそらく昨年に撮られたエミリーの笑顔の写真に一言「エミリー」とハートの絵文字だけを添えた。
『クロース/CLOSE』のルーカス・ドン監督は撮影現場でのスナップに、当時の思い出を語って追悼した。
「初めてあなたに会ったとき、私たちはあなたのお気に入りの1曲、エルヴィス・プレスリーの『好きにならずにいられない』をかけました。すると、あなたは部屋に誰もいないかのように踊りました。私たちはあなたをリラックスさせるふりをしましたが、緊張していたのは私の方で、あなたにすっかり圧倒されていました。エミリー、あなたがいなくなるととても寂しくなります。あなたは深海ダイバーで、未知の世界、暗闇の中へと進むのを恐れません。ためらうことなくそこに行き、魂と体を捧げて他人の世界を表現しました。恐れることなく。戻ってくると、再び別の方向、光に向かって進む準備ができていました。あなたからどれだけ多くのことを学んだか、言葉では言い表せません。あなたのそばにいられるのは何という名誉でしょう。エミリー、ロゼッタ、ソフィー、そしてあなたがとても丁寧に演じてきた他のすべての女性たちを、私はずっと背負っていきます。エルヴィス・プレスリーに合わせて踊りながら、あなたのことを思い出します。ありがとう、エミリー。」。
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