アイドル俳優から脱却、顔だけでなく声も素晴らしいロバート・パティンソン

#この俳優に注目#ミッキー17#ロバート・パティンソン

『ミッキー17』
『ミッキー17』
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『ミッキー17』
『ミッキー17』
『ミッキー17』
THE BATMANーザ・バットマンー
トワイライト

ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』に主演

【この俳優に注目】『パラサイト 半地下の家族』(2019年)でアジア映画初のアカデミー賞作品賞を獲得したポン・ジュノ監督が、ハリウッドで撮った最新作『ミッキー17』は、近未来を舞台にしたSFコメディ。失敗続きで人生が詰む寸前、一発逆転を賭けてとんでもない仕事を引き受けたミッキーの物語だ。

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自分に関するあらゆる情報がデータ化され、過酷な任務で命を落としても新たな肉体にその情報をコピーして再生し続ける――ある意味不死身の使い捨てワーカーとなった主人公は、17人目の“自分”として生きていた。だが、ある誤解から“ミッキー18”が造られ、ミッキーが2人という禁断の状況が発生する。

『ミッキー17』

『ミッキー17』
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

社会や親友と思っていた相手からも搾取されまくるミッキーの悲哀を、何とも言えない軽さとユーモアを湛えて演じるのはロバート・パティンソン。幅広いジャンルの出演作で多様なキャラクターに挑戦し続けている彼は、実写映画の前作『THE BATMAN-ザ・バットマン』(2022年)はダークなブルース・ウェイン/バットマン役であり、本作との落差はかなりのものだ。

『トワイライト~初恋~』でティーンのアイドルに

1986年生まれのパティンソンは10代で俳優デビューし、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年)などを経て、21歳で『トワイライト~初恋~』(2008年)に出演。ヴァンパイアのエドワード役で大ブレイクした。映画はシリーズ化され、共演のクリステン・スチュワートとの恋愛も大きな話題となった。

20代前半をティーン・アイドルとして過ごした彼に転機が訪れたのは、『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2』が完結した2012年。同年、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『コズモポリス』に主演し、ロマンティックな青年のイメージからの脱却を図った。

トワイライト

『トワイライト~初恋~』
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そこから彼が共に仕事をした監督は、ヴェルナー・ヘルツォーク(『アラビアの女王 愛と宿命の日々』2015年)、ジェームズ・グレイ(『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』2016年)、サフディ兄弟(『グッド・タイム』2017年)、クレール・ドゥニ(『ハイ・ライフ』2018年)、ロバート・エガース(『ライトハウス』2019年)など。今年のアカデミー賞で三冠を果たした『ブルータリスト』のブラディ・コーベット監督のデビュー作『シークレット・オブ・モンスター』(2015年)にも出演している。

『TENET テネット』などの大作にも出演

商業映画のメジャー作を敢えて避け、インディペンデント映画に軸を移し、天才・鬼才と称される監督たちとの異色作で、時にミステリアス、あるいはエキセントリックなキャラクターを魅力的に演じ、俳優としての評価を高めていった。そして近年はクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』(2020年)、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)と大作でもその魅力を発揮している。

THE BATMANーザ・バットマンー

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
(C)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC

2人のミッキーを声のトーンで演じ分ける

『ミッキー17』はポン・ジュノ監督にとって、『パラサイト 半地下の家族』から6年ぶりの新作。出演作を選ぶ眼が確かなパティンソンは、脚本を読む前にオファーを受け入れたと語っている。

筆者がパティンソンの出演作を見る際にいつも楽しみにしているのは、彼の声だ。本作でも、ミッキーの声のトーンが印象深い。ミッキー17の不器用で流されやすい性格と諦観が滲む声色と、ほぼ同じなのに明らかに異なるミッキー18の声の響きの演じ分けの細やかさは見事だ。パティンソンはインタビュー(※1)で、1990年代のアニメ「レンとスティンピー」、スティーヴ・ブシェミ、さらには『ジャッカス』シリーズのスティーヴォーの声や話し方をインスピレーションにしたと語っている。個人的には、ポン監督が大ファンの黒沢清監督の『ドッペルゲンガー』で、主人公とそのドッペルゲンガーを一人二役で演じた役所広司の怪演を思い出した。

『ミッキー17』

『ミッキー17』
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『君たちはどう生きるか』の英語吹替版にも出演

実際、パティンソンが脚本を受け取ってまず行うのは、演じるキャラクターに生命を吹き込むために様々な声色を試すことだという。イギリス出身だが、生来のアクセントで演じるのはむしろ居心地が悪く、異なるアクセントを使う方が演じている実感が湧くというのだ。(※2)

確かに『グッド・タイム』ではニューヨーク訛り、『悪魔はいつもそこに』(2020年)では南部訛り、『キング』ではきついフランス訛りを披露し、声のピッチまで変えてくる。『ミッキー17』の前には、宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』の英語吹替版で青サギの声を担当、オリジナルの菅田将暉に寄せた雰囲気を絶妙に再現していた。

「一声、二顔、三姿」とは、容姿よりも声や調子を第一とする歌舞伎における良い役者の条件だが、パティンソンはこれを映画において実践し、3つ全てを同列に並べてみせる。

『ミッキー17』ではナイーブなミッキー17と、短気で邪悪なミッキー18の気質を巧みに演じ分けたが、『TENET テネット』で演じたニールのように、主人公をサポートする役柄も得意。戦隊ヒーローものの二番手ポジションのような、真のヒーローを支えるクールで頼れる存在。影もあれば飄々としたユーモアも併せ持つキャラクターは、彼の十八番のひとつだ。

スキ・ウォーターハウスと婚約、女児も誕生

私生活では、クリステン・スチュワートと破局後、シンガーのFKAツイッグスとの交際を経て、2023年に俳優で歌手のスキ・ウォーターハウスと婚約し、同年に女児が誕生。

アイドルとしてブレイクし、ゴシップメディアに追われ、アート志向への転換を経て再びメインストリームで活躍するというパティンソンの歩みは、ジョニー・デップの軌跡とも重なるようだ。

現在は再びノーラン監督と組む『The Odyssey(原題)』を撮影中で、その後もリン・ラムゼイ監督、ジェニファー・ローレンス共演の『Die, My Love(原題)』やゼンデイヤと共演の『The Drama(原題)』など興味深い企画が控えている。作品ごとに異なるアプローチを見せ、変わり続けるパティンソンに驚かされる楽しみは、まだまだ尽きない。(文:冨永由紀/映画ライター)

『ミッキー17』は公開中。

(※1)https://www.empireonline.com/movies/news/robert-pattinson-mickey-17-voice-ren-stimpy-exclusive/
(※2)https://apnews.com/article/robert-pattinson-mickey-17-bong-joonho-4e0af100d56b3a708c9ce2388ab843e2