BLACKLIVESMATTERを知るための3本、米人種差別の現実を描いた問題作

#抗議デモ

『フルートベール駅で』
『フルートベール駅で』

アメリカの大都市ミネアポリスの白人警官が、黒人男性ジョージ・フロイドさんの首を押さえつけて殺害した事件に端を発し、激しい抗議デモが行われたというニュースは日本でも広く報道された。6月19日の「奴隷解放記念日」にも、全米各地で大規模な抗議デモが行われるなど、事件から1ヵ月ほどたった今でもその余波は広がっている。残念ながら白人警官による、黒人への暴行は今に始まったことではない。それゆえに白人警官の暴力性は、多くの映画で題材となってきた。なぜ憎しみの連鎖は止まらないのだろうか。映画を通じて、この問題を考えてみたい。

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サンダンス映画祭2013で、作品賞&観客賞のダブル受賞という快挙を成し遂げた『フルートベール駅で』は、『クリード チャンプを継ぐ男』でタッグを組んだライアン・クーグラー監督、マイケル・B・ジョーダン主演で作られた衝撃のドラマだ。22歳の黒人青年オスカー・グラントが丸腰だったにもかかわらず、白人警官に殺害された2009年の事件を基にした同作は、オスカーが理不尽な事件に巻き込まれる前の最期の1日を追っている。ニュースを見ているだけでは分からない、ひとりの若者の何気ない日常が奪われたという事実、そして愛する人の死という事実を突きつけられた家族の悲痛な叫びが胸に突き刺さる。

オスカー・グラント殺害事件をモチーフにしたベストセラー小説を、『しあわせの隠れ場所』の製作スタッフが『ハンガー・ゲーム』のアマンドラ・ステンバーグ主演で映画化した『ヘイト・ユー・ギブ』は、日本では配信オンリーでリリースされた日本未公開作品。白人社会と共存し、黒人であることを忘れたように生きてきた16歳の黒人少女スターが、白人警官による幼なじみの殺害事件を目の当たりにしたことにより、その矛盾を感じるようになるさまを描き出す。一元的なものではないものの見方が、差別の問題の根深さを考えさせてくれる1本だ。

銃社会のアメリカでは誰もが疑心暗鬼となり、それゆえに悲劇の連鎖は止まらない。『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー監督の映画『デトロイト』もそうしたことを思い起こさせてくれる1本だ。舞台は1967年夏、デトロイト市警の不当な捜査がきっかけとなり黒人たちの不満が爆発。「デトロイト暴動」は、大量の死傷者を出したアメリカ史上最大級の暴動となった。事実を基にした同作は、その裏側で長年にわたって歴史の陰に埋もれてきた“戦慄(せんりつ)の一夜”を描きだす。警察や軍が、おもちゃの銃の音を、狙撃犯による発砲であると誤認したことから起こったこの事件。密室状態のモーテルに9人の若者が押し込められ、警官から強制的な尋問を受けることとなる。思わず目をそむけてしまいそうな暴力描写は、まるで観客がその事件を目撃しているかのような生々しさがある。(文:壬生智裕/映画ライター)