2020年8月28日、安倍首相が突然の辞意を表明し、日本中に衝撃が走った。目下、自民党総裁選の真っ最中で14日に次期総裁が決まるが、どこか国民が置いてきぼりにされている感は否めない。日本ではもともと「飲み会などの場では政治と宗教と野球の話はしない方が無難である」と言われてきたこともあるのかもしれない、特に近年の若者の政治離れは深刻で、低投票率にもつながっている。
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政局が波乱含みの展開を見せる中、それに合わせた、というわけではないだろうが、くしくもここ数カ月で政治をテーマにしたドキュメンタリー映画が続々と公開されている。どの作品も適度な毒っ気を含んでいるが、ユニークな視点で政治の裏側を見せてくれる。われわれはついつい「どうも政治は難しくて……」という風に敬遠してしまいがちだが、コロナ禍で先行きが不透明な現在だからこそ、生活に直結する政治に関心を持ち、知識を深めてみる時期に来ているのかもしれない。
次期首相候補がニュースなどで報じられる中、『なぜ君は総理大臣になれないのか』というストレートなタイトルの映画がポレポレ東中野ほかにて公開中だ。「情熱大陸」や「ノンフィクション」といったドキュメンタリー番組を手がける大島新監督作品が、衆議院議員・小川淳也を17年にわたって追いかけている。2019年の国会で統計不正をただし、SNSで「統計王子」と注目を集めた小川議員だが、その気高い政治思想とは裏腹に、権力への欲望が足りず、家族からも「政治家には向いていないのでは」と心配されるほどだった。政治家たるもの、党利党益に貢献しないと出世できず、選挙区当選でなければ発言権も弱い。人々は政治家に誠実さを求めるが、誠実であっても権力を握ることができるわけではない。それが「政治というものなのさ」と割り切ることができるのか。いろいろと考えさせられる。
では政治家は狡猾であればいいのだろうか。“有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一”である保守王国・富山県で市議会議員の「政務活動費の私的流用」が次々と発覚し、半年の間に14人の議員が辞職していったさまを描き出したドキュメンタリー映画が、ユーロスペースほかにて全国順次公開中の『はりぼて』である。政務活動費の私的流用が常態化していた市議会議員に、ローカルテレビ局「チューリップテレビ」のニュース番組のスタッフたちが切り込んでいく。最初は開き直り、権力の座にしがみつこうとしていた議員たちも、しつこく食い下がるスタッフたちから動かぬ証拠を突きつけられるとついに観念し、辞職に追い込まれる。その姿はコントのように滑稽であり、うろたえる政治家たちの姿を見た観客も溜飲を下げることができる。だが、それなのに次第に暗たんたる気持ちにとらわれてしまう。
令和元年夏、山本太郎率いる政党「れいわ新選組」から参議院選挙に出馬した10名の個性豊かな候補者たちを『ゆきゆきて、神軍』の原一男が追う『れいわ一揆』が9月11日よりアップリンク渋谷ほかにて全国順次公開となる。出馬するのは、女性装の東大教授として知られる安冨歩を中心に、コンビニ加盟店ユニオンの活動家、公明党に疑問を呈す創価学会員、元派遣労働者のシングルマザー、ALSの重度身体障害者といった人たち。彼らの選挙活動はなかなか大手マスメディアで取りあげられる機会は少なかったが、この映画でその裏側を知ることができる。(文:壬生智裕/映画ライター)
『なぜ君は総理大臣になれないのか』 オンライン上映イベント第二弾開催
●配信スケジュール/9月26日、19:45~23:00予定
(19:45開場、20:00より本編ライブ上映、22:00 よりスペシャルトーク配信)
●チケット購入先
uP!!! <https://bit.ly/3lSpcI6> PIA LIVE STREAM <https://w.pia.jp/t/nazekimi2/>
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