インテリア壁紙業界騒然! 原色系ストライプ&花柄のオンパレードの映画『シェルブールの雨傘』
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ミュージカル映画の傑作
映画の中のインテリアを取り上げる本稿の題材は、『シェルブールの雨傘』。1964年公開のフランス映画で、監督はジャック・ドゥミ。
作品の舞台は、1957年のフランス北西部の港町シェルブール。傘屋の少女ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と自動車修理工のギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)の恋が、アルジェリア戦争によって引き裂かれる。かの有名な音楽をミシェル・ルグランが担当した全編ミュージカルの作品だ。
ストライプの壁紙のカラーが人物の境遇を映す
これほど壁紙業界が大騒ぎした映画もないだろう。60年代のフランスを舞台にしているが、当時のヨーロッパの壁紙はまさにこの映画のとおりだった。いまでも繰り返し壁紙の代名詞として引き合いに出される作品だ。
本作では、それぞれの登場人物の境遇やキャラクターとインテリアのマッチングが見どころのひとつと言えるだろう。
恋を歌い上げるジュヌヴィエーヴの職場の傘屋は、ピンクの縦ストライプで、奥に見える部屋の壁は鮮やかなパープルだ。自宅も、リビングはピンクとグリーンの縦ストライプだが、母の部屋は赤にバラの花柄、ジュヌヴィエーヴの部屋はブルーに花柄で存分にガーリーなのだ。
ギイの自宅も、ジュヌヴィエーヴの家に比べると質素ではあるが、やはり縦ストライプの壁紙が使われている。伯母の部屋は、その年齢を感じさせるくすんだオリーブ色だが、ベッドには赤のベルベッドカーテンが下がり、大切にされていることがうかがえる。一方のギイの部屋は、清貧ながら希望溢れる青年らしく、鮮やかなブルーだ。
インテリア壁紙の流行はヨーロッパ発。ウィリアム・モリスらが貢献
ここでインテリア壁紙について説明しておこう。
壁紙とは、一定の幅でパターン仕上げができる量産品のことをいう。ヨーロッパにおいては、19世紀末のアールヌーヴォーの影響を受けたウィリアム・モリスら優れたデザイナーたちの手によって、自然物をモチーフにした連続柄が洗練されていった。それ以来、壁紙をはり替えることで部屋を模様替えする文化が根付いたとされる。
そして最近では、デジタルプリント技術の発達や、シックハウスを拡散しないフリース(不織布)生地の開発など、デザイン、機能ともに進化を遂げながらもやはり壁紙は根強い人気を誇る。
日本のインテリア壁紙は多機能重視。デザインはアイボリー系マットが中心
では日本はというと、最近こそシックハウス対策として漆喰などの塗り壁が増えたと言われるものの、実際にはなお壁の仕上げの9割に壁紙が用いられている。
日本がこれほどまでに世界屈指の壁紙文化になったのは、東京オリンピックのホテル需要と公団建設で爆発的に普及したから。ホテルや集合住宅需要が、塩化ビニールクロスに防炎性能を強く求めた結果、今に至る。近年は抗菌、消臭などの多彩な機能付き壁紙が開発され、日本ではサンゲツやリリカラ、新コールと言った国産が依然人気となっている。
もっとも、その最大の理由はコスト。選ぶ柄も、ハウスメーカー持参の見本帳の中から、施主が無難なアイボリー系マットホワイトを中心に選ぶ。
パーソナルな空間で自分を表現できる
たしかに、『シェルブールの雨傘』に登場するような原色系のストライプや花柄の壁紙は、部屋のエッジ部分に見切りやモールディングがあり、カーテンや窓枠なども含めてしっかりコーディネートされた空間に相応しい。
ともあれ、個性的な壁紙はその空間の雰囲気を一変させる。6面のうち1面あるいは一部だけ異なる壁紙を使うアクセントクロスや、トイレや寝室、子ども部屋など、小空間のパーソナルな空間まるごとひと部屋に徹底的に使ってみてはどうだろう。
とくにヨーロッパの輸入壁紙は、高価だが自分の世界観を表現するためにチャレンジする価値がある。コーディネーターとともに、輸入壁紙を扱うショップを訪ねて、「こんな映画のこんな部屋」をモチーフに相談してみてはどうだろう。(文:fy7d)
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