【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第15回】
いつもコラムを読んでくれているあなた、どうもありがとう。
はじめて読んでくれたあなた、はじめまして。
ぼく瀧川鯉八は落語家です。
今年の5月に真打に昇進しました。
真打というのはつまり、師匠になったということです。
おめでとうございます。
ありがとうございます。
都内の寄席で真打昇進披露興行が40日間行われる予定でしたが、こんな世の中になってしまい延期となりました。
そしてとうとう10月11日から始まりました。
新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場です。
よかったら是非お越しください。
それより先んじて、ソーゾーシー全国ツアーも始まりました。
ソーゾーシーというのは、新作ネタおろしのユニット名。
メンバーは落語家3人と浪曲師1人。
新作ネタおろしというのは、作りたてほやほやの落語と浪曲ということです。
ミュージシャンが新曲をひっさげてツアーをするのと同じことです。
古典落語や古典浪曲のほうが、みなさん馴染みがあってイメージしやすいかと思います。
江戸時代から脈々と受け継がれている芸術品のような話芸のネタがある世界ですが、我々は果敢に自分でネタを作っています。
芸術とは、演芸とは、表現とは、創作と継承と破壊の繰り返しなはず。
であるならば、創作することは表現者にとって当たり前の行為。
ですが、古典落語と古典浪曲があまりにも素晴しすぎるため、新作落語と新作は邪道であるとみられがち。
いやそうではない! 我々こそが王道である! という気概でせっせと作っては発表しているのです。
昨年が全国5ヶ所。そして今年は3倍の15ヶ所。
感染対策を小屋も芸人もお客さんも万全の体勢を敷いて細心の注意を払って。
小屋の半分しかお客様を動員できないため収入は当然減ります。
それでは主催者の方々に負担が大きすぎる。
そこで全国の演芸ファンの力を借りてクラウドファンディングを行いました。
みなさまの応援支援のおかげでツアーが成り立っています。
この場を借りて感謝申し上げます。
ひっさげてきた落語と浪曲が面白いという保証はまったくありません。
普通の感覚であれば、全国でやるときには既に得意としている演目をやるものです。
お客様もそれを望んでいます。
ミュージシャンがツアーで誰も聴いたことのない曲ばかりやるでしょうか。
既にヒットしている曲に新曲をまぶしていくでしょう。
しかし、我々は新曲だけでツアーをやっています。
それも全員が。
これは前代未聞です。
しかし、そもそも、創作に表現に安心安定の演目などないはずです。
笑ってもらえるかどうかわからないが、自分だけは面白いと思っている。
それを聴いてもらいたいんだ! それだけです。
ソーゾーシーに来てくれるお客様はそれを理解して受け入れ、そのヒリヒリする状況すらも楽しんでくれているのです。
それは表現者にとっては厳しくもあり幸せなことです。
改めてメンバーを紹介すると、
落語家の春風亭昇々、立川吉笑。
浪曲師の玉川太福。
いずれも才能に恵まれ、研鑽を積むことを悦びとする、人気と実力を兼ね備えた若武者たちです。
映画よりも想像する余地がある演芸。
目の前のお客様が縦横無尽に頭のなかで絵を描くことができる娯楽。
全国のみんなとワハハと時間と空間を共有したい。
今まで味わったことのない感情と感動をプレゼント。
ぜひお越しいただけると幸いです。
昨年のツアードキュメンタリームービーをエリザベス宮地監督が製作。
その完全版が12月20日の日曜日に沖縄の桜坂劇場で公開予定。
この日の公演はソーゾーシーの演芸と映画の2本立て。
見逃すな!
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
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