10月16日から公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が驚異的なスタートを切った。公開後3日間で動員約342万人、興収約46億2300万円を記録。昨年の『天気の子』16.4億円、『名探偵コナン 紺青の拳』18.9億円を2倍以上上回る歴代新記録となっている。
原作マンガは16年2月から「週刊少年ジャンプ」に連載され、今年5月に連載を終了。コミックスは10月2日発売の22巻で累計発行部数が1億部を突破。絶好のタイミングでの映画公開となった。公開に合わせて、フジテレビ系の「土曜プレミアム」で10月10、17日の2週連続でテレビアニメの特別編集版を放送。10日の視聴率は16.7%、17日は15.4%と高い数字を記録。話題性の喚起につながった。
スタートダッシュに一役買った入場者特典は2つ。1つは『鬼滅の刃 煉獄零巻』で、原作者・吾峠呼世晴が描き下ろした煉獄杏寿郎の鬼殺隊での初任務を描いた漫画、劇場版登場キャラクターの新録「大正コソコソ噂話」や、劇場版のスタッフ・キャストインタビューなどを収録した84ページにおよぶ特製冊子。全国合計450万人に配布する。もう1つが原作者・吾峠によるメッセージつき塗り絵で、全国260万人に配布。炭治郎らメインキャラクター4人を描いた2種類の絵柄を両面に描いたものだ。
動員増を後押ししたのが上映館での入場制限解除と上映回数だ。政府が9月19日にイベント開催制限を緩和してから、映画館では全席の販売が可能になった。ただし、全席を販売するには館内の食事を禁止しなければならないことから(飲み物のみ可能)、従来通り全座席の半分しか売らない入場制限を続ける映画館が多かった。しかし、『鬼滅の刃』はかなりの集客が予想されたことから、初日3日間(16~18日)を全席販売で対応するシネコンチェーンが多く、TOHOシネマズ、ユナイテッドシネマ、109シネマズ、MOVIX、Tジョイなどで全席販売した。
上映回数も群を抜く多さで、通常は1日5回のところ、10回以上は当たり前。20回を超えるシネコンも多くあった。日本最大級の動員を誇るTOHOシネマズ新宿では16日に朝7時から深夜26時50分の上映回までで42回、17日は41回、18日は35回だった。
月間の興行収入を発表しているTOHOシネマズを例にとると、1~9月の累計興収は前年比39.9%。『鬼滅の刃』の記録的大ヒットで年間興収の底上げが期待されている。(文:相良智弘/フリーライター)
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