BL劇場アニメなのに大ヒットしたエポックメイキングな『同級生』
人気漫画家・中村明日美子の代表作といえば、BLコミック「同級生」。そのシリーズ最新作「blanc(ブラン)」が2ヶ月連続発売となり、2巻目の「blanc #2」が2020年10月23日に発売される。
・BLに抵抗感がある人にこそ見て欲しい! ダークでバイオレントなBL映画
中村は熱狂的ファンを持つ作家で、「同級生」は2016年に劇場アニメ化されており、リピーターも多くて小規模公開ながら動員数ランキングでトップ10入りを果たすなどの記録を樹立。今もBL関連の取材をすると、制作者側から劇場アニメ『同級生』の話がたびたび引き合いに出されるほど、エポックメイキングな作品となった。
男子高校生たちの甘酸っぱい王道BL作品の一方で…
「同級生」は真面目な優等生の佐条利人と、バンドをやっている草壁光の高校生2人の恋愛を描いた爽やかでピュアなラブストーリー。接点のなさそうな2人がひょんなことで距離を縮めてやがて恋に落ちていく、甘酸っぱくてじれったい展開にキュンキュンとなる王道の作品だ。
ただ、この作品で中村を知って、キュンキュンの王道ストーリーを求めて他の作品にも手を出し、痛い目に遭った人もいるかもしれない。実は、仄暗く病んだ世界観を持つ作品もあるからだ。実写映画化もされた「ダブルミンツ」などはそのいい例で、支配する側と従者の暴力的で危うい関係が描かれている。義理の兄弟の愛憎と確執を描いた「薫りの継承」も非常に背徳的な味わいの作品だ。
ダークな世界観と独特なタッチの官能的な絵柄が魅力
しかしながら、「同級生」から中村の作品に入り、拒絶するどころか新たな扉を開かされてダークな世界の虜になったという人もいるようだ。実は「同級生」にしてもキラキラなばかりでなく、仄暗い匂いはかすかにしている。中村明日美子の描く絵は流線形の多い独特なタッチで、エロシーンなどではないのになぜか官能的な手触りがする。エロシーンは言うまでもなく、官能的だ。
中村明日美子の画業は長く、2020年9月には「中村明日美子20年展」が池袋PARCOで開催された。一般漫画も多く手がけているが、BLもコンスタントに発表しているのがBLファンには嬉しいところ。BL好きなら一度は読んでおきたい作家だ。(文:牧島史佳/ライター)
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