アニメが人気を博している『呪術廻戦』(じゅじゅつかいせん)。週刊少年ジャンプの作品としては、人気絶頂で幕を閉じた漫画『鬼滅の刃』に続くヒットになりそうな気配を漂わせている。
“ポスト『鬼滅』”の呼び声高い『呪術廻戦』 可動フィギュアと「両面宿儺の指」が発売決定!
『呪術廻戦』は、漫画家の芥見下々(あくたみ・げげ)先生による「呪い」がコンセプトのダークファンタジー漫画、およびそれを原作とするTVアニメ(MBS/TBS系にて毎週金曜日深夜1時25分放送)。呪霊と、呪霊を払う呪術師の壮絶な争いを描く。
人気バトル漫画の良い点継承 絵柄は『HUNTER HUNTER』や『幽遊白書』に近い迫力
アニメ最新話「急襲」(第7話)では、“最強の呪術師”と呼ばれる五条悟が特級呪霊・漏瑚(じょうご)の奇襲を受ける。漏瑚は、攻撃を重ねるも決して当たらない…。五条の強さを目の当たりにする。一瞬で高専に戻り、修行中の虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)まで連れてくる余裕の五条に、漏瑚は怒りを爆発させ、呪術の局地技である「領域展開」を使う。対して五条は…というストーリーが展開される。
ネタバレは避けるが、週刊少年ジャンプで掲載中の『呪術廻戦』最新話は、絵柄が『HUNTER HUNTER』や『幽遊白書』に近い迫力を見せている。また連載が進むにつれて絵がより上手くなる、というこれまでの人気漫画家たちと同じ特徴も示し始めている。
「呪い」というコンセプトは「人間を食う種族」を描いた『東京喰種』(週刊ヤングジャンプで連載。2018年に連載終了)を彷彿とさせるダークさだ。『HUNTER HUNTER』や『東京喰種』の良い点を吸収しつつ、ジャンプの三大原則“友情・努力・勝利”を描く。
加えて『呪術廻戦』に登場する攻撃技「領域展開」は、それぞれの個性に応じて変幻自在の技になる点が、『HUNTER HUNTER』の念能力や『BLEACH』の必殺技「卍解(ばんかい)」に似て、読者を飽きさせない仕掛けになっている。
今後の不安点は面白さと複雑さの共存
そんな『呪術廻戦』にも不安点はある。その1つはコンセプト。『東京喰種』にも言えるように、「呪い」や「人食い種族」というコンセプトは、逆説的に「人間とは何か」を突き詰める傾向にある。それはある意味、“文学する”行為に近い。人間の真に迫り、ストーリーは俄然面白くなるが、展開や作品の結末が難しくなる諸刃の剣だ。
また前述の「領域展開」を駆使したバトルは、時に物理学チックな解説を施す。『HUNTER HUNTER』のように、緻密な戦術解説が入ることも少なくない(その分、読み応えはあると言えるが)。ストーリーの進行に伴ってコンセプトやバトルがあまり複雑になると、読者がついていけなくなる恐れがある。
攻撃能力や舞台設定を複雑に作り込みながらも読者を楽しませる『HUNTER HUNTER』は、冨樫先生の名人芸であり至難の業だ。とはいえ、『呪術廻戦』も既刊(全13巻)は尻上がりに面白くなっている。様々な複雑さを上手く消化して『HUNTER HUNTER』の域に達するなら、令和を代表する人気バトル漫画になる可能性が高い。
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