2020年振り返り:コロナ禍の撮影に悪戦苦闘のハリウッド映画界
新型コロナウイルスによるパンデミックで、2月下旬から新作映画の撮影中止が相次いだ今年のハリウッド。イタリア・ヴェネチアでのロケが中断された『ミッション:インポッシブル』シリーズの最新作をはじめ、あらゆる作品の製作にストップがかかった。
わずかながら感染拡大がスローダウンした初夏から、撮影は徐々に再開されたが、ハリウッドの撮影スタジオは閉鎖中だったことから、国外スタジオや海外ロケから再スタートを切った作品が多い。
スタッフや俳優など大人数が密室状態のスタジオで仕事をするのが映画撮影だが、感染予防の観点から見ればNG。そこで新しい様式の徹底が提唱された。
イギリスのパインウッド・スタジオで再開した『ジュラシック・ワールド』シリーズ最新作『Jurassic World:Dominion(原題)』の撮影では、事前に関係者1万8000名の検査を実施。現場用に107ページもの安全対策マニュアルが用意された。キャストは週3回検査を受け、関係者全員の検温、スタッフはマスクとフェイスシールドを着用、食事は真空パックされたものをビニールシート越しに手渡される、など細かい取り決めが設定された。
スタッフの数も必要最小限に抑え、スタジオ内に手指消毒スペースを150カ所ほど設置する念入りな準備には予算もかかる。だが、そこまでしても撮影再開後、スタッフの一部は検査で陽性反応が出る有様だった。
映画やTVシリーズの撮影がよく行われるカナダのヴァンクーヴァーでは、各作品の撮影が一斉に始まったことからコロナの検査機関がパンク状態に。検査待ちのために撮影が中断する事態も発生した。
TVシリーズ『リバーデイル』(Netflixにて配信中)では、インスタグラムでキャスト2人が“新しい様式”でのキスシーン撮影について紹介・解説したが、のちにこのやり方は感染予防には不適切だと指摘があった。初めての事態に撮影現場も手探り状態だったことがうかがえる。
イギリスでは9月から撮影が再開した『The Batman』では関係者のウイルス感染が発覚し、撮影が中断された。公表はされなかったが、この“関係者”は主演のロバート・パティンソンだったと言われている。
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今年は世界各地の映画館が、感染予防のために一時閉鎖を余儀なくされ、その結果、公開が延期になった大作は数多い。9月には『TENET/テネット』、12月には『ワンダーウーマン1984』が劇場公開されたが、後者はアメリカでは12月25日(現地時間)の劇場公開と同時に動画配信サービス「HBO Max」での配信が発表された。
同作を配給するワーナー・ブラザースは2021年に公開予定の17作品も同様に、劇場公開とHBO Maxでの配信を同時に行うと発表。『Godzilla vs. Kong(原題)』やドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『Dune/デューン 砂の惑星』や『マトリックス』シリーズ最新作の『Matrix 4(仮題)』などもリストに入っている。
この決定には、ワーナー・ブラザースで映画を撮り続けてきた『TENET/テネット』のクリストファー・ノーラン監督が猛反発。「私たちの業界の最大の映画製作者たち、そして最も重要な映画スターたちの何人かは、最高の映画会社と仕事をしていると思いながら就寝し、目が覚めたら、自分たちが最低の配信サービスと仕事をしていたことに気づいたのです」と声明を寄せた。
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ノーランは、各作品の関係者に事前に何も知らせずに発表した米ワーナー側への不信感を隠さず、長年かけて取り組んだ大切な作品が「誕生したばかりの配信サービスの客寄せに利用されている」「これはおとり商法だ」と厳しく断じた。
ヴィルヌーヴ監督も「この決定により、AT&T(HBO Maxは同社の傘下)は映画史上最も尊敬される重要なスタジオの1つを乗っ取った。そこに映画への愛も、観客への愛もない」と声明を出した。
『ワンダーウーマン1984』のパティ・ジェンキンス監督は出演したラジオで劇場公開と配信が同時に行われることについて、映画を観客に届けることができたことについては「感謝している」とコメントしつつ、これから見る人たちに向けて「できるだけ大きな画面を選んでください。お願いします!」と呼びかけた。
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