音楽もやれるなら、と出演を引き受けた『戦場のメリークリスマス』
【日本の映画音楽家】坂本龍一(1)
映画音楽を手がける日本人アーティストとしては、質・量ともに圧倒的な存在と言える坂本龍一。映画音楽家としてもっとも有名な曲といえば、やはり大島渚監督『戦場のメリークリスマス』(1983年)のテーマ曲「Merry Christmas Mr.Lawrence」ということになるだろうか。
・最後のロードショー!『戦場のメリークリスマス』『愛のコリーダ』劇場公開
坂本はデヴィッド・ボウイやビートたけしとともに役者としても出演し、俘虜収容所の所長・ヨノイ大尉を演じている。演技経験はなかったが、当初キャスティング予定だった沢田研二がスケジュールの都合で出演できなくなり、YMOの一員として人気だった坂本に白羽の矢が立ったのだという。もともと音楽を担当する予定はなく、出演が決まった際に「音楽もやれるなら出演する」と坂本から監督に逆オファー。映画音楽家・坂本龍一のキャリアは、ほとんど偶然に近い形でスタートしたわけだ。
『ラストエンペラー』で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞
その後、ソロ活動と並行して畑正憲監督『子猫物語』(1986年)や、ガイナックス製作のアニメ『オネアミスの翼』(1987年)を経て、ベルナルド・ベルトルッチ監督『ラストエンペラー』(1988年)の音楽を担当。俳優としても元陸軍憲兵大尉・甘粕正彦役で出演した本作で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞したことにより、坂本龍一は「世界のサカモト」に。映画音楽界で広く知られる存在となった。『ラストエンペラー』のサウンドトラックはデヴィッド・バーンらと分担して制作されており、バーンの手がけた明るいトーンの楽曲に対して、坂本はシリアスでドラマティックな展開の楽曲を担当。テーマ曲や「レイン」といった楽曲は、いまでもライヴのレパートリーとしてピアノソロで演奏されることが多い。
ベルトルッチ監督との3作は映画音楽家としての代表作に
ベルトルッチ監督とはその後も2度タッグを組んでいる。1991年の『シェルタリング・スカイ』のテーマは本人も「聴くたびに泣いてしまう」というほど物悲しい旋律の楽曲で、これもまたライヴの定番曲になっている。1994年の『リトル・ブッダ』では監督から「これ以上ないほど悲しい曲を」というオーダーを受けて書いたエンド・クレジットの楽曲がよく知られている。オーダーの通りの悲しい曲を書き上げて監督に聴かせたところ「これは悲しすぎるから書き直せ」と言われ、坂本が激怒したというエピソードが本人の著書で語られているが、何度もの衝突を経て完成されたベルトリッチ監督との3作は、いずれも映画音楽家としての坂本龍一を代表する作品として聴き継がれている。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)
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