『あまちゃん』も『花束みたいな恋をした』も。劇伴で活躍する大友良英

#あまちゃん#大友良英#映画音楽家#江藤直子#花束みたいな恋をした

CD『GEKIBAN1』大友良英
CD『GEKIBAN 1 -大友良英サウンドトラックアーカイブス-』大友良英
(2019年/ビクターエンタテインメント)

昨年末にはのんらとユニット「のんとも。M」を結成

【日本の映画音楽家】大友良英

2020年12月24日、のん大友良英・Sachiko Mによるユニット「のんとも。M」の1stアルバム『ショーがはじまるョ!』がリリースされた。先行して公開された収録曲「明日があるさ」のMVでは、小泉今日子・尾美としのり・片桐はいり・渡辺えり・尾身美詞がゲストヴォーカルとして参加。大友良英スペシャル・ビッグバンドのリッチな演奏に合わせてNHK連続テレビ小説『あまちゃん』と映画『この世界の片隅に』(※両作とも、のんが出演)のキャスト陣がリモートで歌声を重ねる様子は、両作のファンを喜ばせた。

・ロードムービー? メロドラマ?『岸辺の旅』を彩る大友良英&江藤直子の楽曲

90年代から映画音楽を手がけ、「潮騒のメモリー」で一躍メジャーに

その『あまちゃん』(2013年)の劇伴と劇中曲「潮騒のメモリー」で、一躍幅広い世代に知られるようになった大友良英。それまでは“知る人ぞ知る”という形容がぴったりのノイズ&即興音楽家だったが、いっぽうで90年代から映画音楽を数多く手がけるようになり、『風花』(2001年)、『色即ぜねれいしょん』(2009年)、『東京島』(2010年)、『きいろいゾウ』(2013年)などの作品で映画音楽家としての評価を高めていく。

明治大学在学中からギタリストの高柳昌行の付き人としてフリージャズの世界に出入りしながら、大学では民族音楽研究の第一人者である江波戸昭のゼミで民族音楽を勉強していた大友は、そこで「西洋のクラシックだって、西洋の民族音楽の一体系でしかない」ことを学んだという(河出書房新社刊『伊福部昭 ゴジラの守護神・日本作曲界の巨匠』より)。また、同書のインタビューで大友は『黄金の日日』という高校時代に見た大河ドラマの「アングラとオーバーグラウンドがいっしょくたになった感じ」に衝撃を受け、いつか自分もそんなテレビドラマの音楽をやってみたかったとも語っている。

大友の音楽に甘さや優雅さを加える江藤直子の貢献

そんな大友良英のボーダレスな音楽観が最良の形で結実した『あまちゃん』の劇伴は、劇中で流れる数々の昭和歌謡と並走するような軽音楽風のサウンドが基調となっていたが、そこにノスタルジックな甘さを加えた江藤直子によるストリングスアレンジも忘れるわけにはいかない。ロックバンドのGiulietta Machineでヴォーカル&キーボードを務めながら、相米慎二監督『あ、春』(1998年)以降、大友が劇伴を担当する作品の大半でピアノやストリングスアレンジを担当してきた江藤の貢献は、ここでもかなり大きい。両者は2015年の黒沢清監督作品『岸辺の旅』の音楽も共同で担当。素朴で穏やかな映像に、優雅にオーケストレーションされたメロウな楽曲を提供している。

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『花束みたいな恋をした』が大ヒット中、今後の活動にも期待

2020年はマッツ・グスタフソンとの『TIMING』やコンストラクトとの『Eastern Saga:Live at Tusk』など、ホームグラウンドであるノイズ&即興音楽の方面でも積極的なリリースが印象的だったが、2021年は先の「のんとも。M」をはじめ、1月29日の公開後大ヒットを続けている映画『花束みたいな恋をした』の劇伴など再びメジャーフィールドの活動が目立つ大友良英。その振り幅の広さがどんな作品に活かされるのか、今後も目が離せない。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)

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