世界で活躍する作曲家・三宅純が手掛ける映画音楽と舞台音楽
#9人の翻訳家 囚われたベストセラー#Lost Memory Theatre#No.9 ー不滅の旋律ー#三宅純#映画音楽家
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』など洋画の音楽も担当
【日本の映画音楽家】三宅純
レジス・ロワンサル監督の映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年)の音楽を担当したことも記憶に新しい三宅純は、日本とフランスに拠点を置く作曲家兼トランペット奏者。日野皓正に見出され、ジャズのフィールドで活動を始めた人だが、ジャンルにとらわれない豊かな音楽性に裏打ちされた作曲家としての能力が注目され、80年代よりCMや映画などの分野で多くの作品を手掛けるように。
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日本では、多種多様な音楽要素が違和感なく共存する『永遠乃掌』(1988年)、名匠ハル・ウィルナーのプロデュースによる『星ノ玉ノ緒』(1993年)、ブラジル音楽への三宅流アプローチが斬新な『Innocent Bossa in The Mirror』(2000年)など、ソロアーティストとして制作したアルバム群の評価が高いが、映画音楽家・舞台音楽家として手がけた作品も数多い。
稲垣吾郎主演の舞台『No.9 ー不滅の旋律ー』の音楽も話題に
近年の作品を振り返ってみると、映画はではヨセフ・シダー監督のハリウッド映画『嘘はフィクサーのはじまり』(2016年)、蜷川実花監督の日本映画『人間失格:太宰治と3人の女たち』(2019年)、先の『9人の翻訳家』やカズオ・イシグロ原作のドラマ『浮世の画家』(2019年)など。舞台では白井晃の演出作品が多く、『中国の不思議な役人』(2009年)、『ジャンヌ・ダルク』(2010年)、『幽霊たち』(2011年)、『9days Queen ~9日間の女王~』(2013年)、『Lost Memory Theatre』(2014年)、そしてベートーヴェンの半生を描いた『No.9 ー不滅の旋律ー』(2018年)も稲垣吾郎&剛力彩芽の出演で大きな話題を呼んだ。
必聴のソロアルバム三部作を舞台化した『Lost Memory Theatre』
これらのうち、特に高い人気を誇る作品が『Lost Memory Theatre』。これは2013年の『Lost Memory Theatre act-1』から2017年『同 act-3』まで、本人がライフワークと語るほど思い入れの強いソロアルバム三部作を舞台化したもので、コンセプトは「三宅純の音楽そのものを舞台化すること」。山本耕史・美波・森山開次・江波杏子らキャストが三宅の音楽に合わせてパフォーマンスを繰り広げる。アルバムはいずれもブラジル音楽やポスト・クラシカル、エレクトロニカ、シャンソンといったジャンルを自在に横断する音楽性と、世界中の名うてのミュージシャン・ヴォーカリストを起用したサウンドがとにかくリッチで、音楽家・三宅純の現在地点をうかがい知ることのできる必聴盤だ。
あるインタビューで、20代後半まではトランペット奏者としてのみ活動していたが、数多くの作曲をこなすうちに「トータルな世界観の構築」に興味がシフトしていったと三宅本人が語ったことがある。音楽の世界がストリーミング主流となり、「アルバム」という単位が次第に重要視されない時代となった現在も、作品集としてのアルバムづくりにこだわる三宅純の作家性は、数々の映画のサウンドトラックでも変わらない。未聴の方は『Lost Memory Theatre』シリーズを入り口として、『9人の翻訳家』などの映画音楽を聴き進んでみてはいかがだろうか。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)
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