“日本ポップスの父”を祖父にもち、父は作曲や編曲で優れた作品を残す
【日本の映画音楽家】服部隆之
音楽一家・服部家の3代目として、映画やドラマの劇伴、さまざまなアーティストへの楽曲提供や編曲など、幅広い活動を続けている服部隆之。祖父は「東京ブギウギ」「青い山脈」「蘇州夜曲」「東京ブルース」などの流行歌で知られる服部良一、父はアニメ『トム・ソーヤーの冒険』や歌番組「ザ・ベストテン」のテーマ曲の作曲、山下達郎&竹内まりや夫妻や谷村新司らのヒット曲の編曲を数多く手がけた服部克久で、ともに作品を挙げていくだけで1本の記事ができ上がってしまうぐらい膨大な作品を残した音楽家である。親子3代にわたって音楽業界の第一線で活躍するという例は世界的に見ても珍しく、現在は隆之の娘・服部百音も若手ヴァイオリニストとして注目されている。
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“日本ポップスの父”と呼ばれる服部良一がジャズをルーツとする歌ものの作曲を中心としたのに対して、克久はクラシックの素養を活かした編曲の分野でその才能を発揮した。昨年2020年6月11日に83歳で亡くなる少し前まで、ライフワークであるアルバム『音楽畑』シリーズのリリースや、さまざまなアーティストの共演を精力的に行なっている。
大河ドラマ『新撰組!』や『真田丸』など三谷幸喜とのタッグも
服部隆之は、父・克久と同じくパリ国立高等音楽院でアカデミックな音楽教育を受け、1988年の帰国後、さだまさしの楽曲の編曲を起点として活動を開始しているが、音楽家としては祖父・良一の作曲のセンスと父・克久の編曲のセンスをバランスよく継承しているところが大きな特徴と言える。ドラマ『王様のレストラン』(1995年)あたりから、耳に残るキャッチーなメロディを豊潤なオーケストレーションで包み込んだ作曲・編曲が注目されるようになり、同じく三谷幸喜のNHK大河ドラマ『新撰組!』(2004年)と『真田丸』(2016年)、映画『ラヂオの時間』(1997年)や『みんなのいえ』(2001年)、ミュージカル『オケピ!』(2000年、2003年)のほか、フジテレビの『HERO』(2001年)や『のだめカンタービレ』(2006年)、TBSの『華麗なる一族』(2007年)や『下町ロケット』(2015年、2018年)など、テレビを主戦場として数多くの音楽を担当している。
現代ドラマ『半沢直樹』に大河のような劇伴をつけて独自の世界観を演出
近年の代表作といえば、やはり『半沢直樹』(2013年、2020年)ということになるだろうか。現代ドラマに大河ドラマ的なスケール感の大きい、耳に残る劇伴をつけることで、『半沢』ならではの独特な世界観づくりに貢献している。その一方で、2018年からは映画『ドラえもん』シリーズの音楽も担当し、コロナ禍で公開延期になった最新作『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』でも30曲前後の劇伴を作曲しているという(主題歌はOfficial髭男dismの主題歌「Universe」)。
偉大な音楽一家の3代目というプレッシャーは、他人には想像すらできないが、それを見せることなく軽やかに多くの音楽を生み出し続ける服部隆之。ドラマや映画でその音楽が気になった方は、福山雅治や山崎まさよし、小沢健二らの作品で聴かせる流麗かつ引きの強いストリングス・アレンジにも耳を傾けていただきたい。なかでも小沢健二の「強い気持ち・強い愛」は、昨年亡くなった作曲家・筒美京平のメロディと小沢のテンションの高いヴォーカルを最大限に照らし出す、素晴らしい弦楽セクションの響きを味わうことができる。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)
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