家も職もなくした60代女性描く『ノマドランド』が作品賞と監督賞受賞 第78回ゴールデングローブ賞
#クロエ・ジャオ#ゴールデングローブ賞#ザ・クラウン#ジョディ・フォスター#ダニエル・カルーヤ#チャドウィック・ボーズマン#ノマドランド
黒人俳優の受賞相次ぐ
アカデミー賞の前哨戦の1つ、第78回ゴールデングローブ賞が発表され、『ノマドランド』がドラマ部門作品賞と監督賞を受賞した。
・黒人会員ゼロ ゴールデングローブ賞会員の人種的構成に批判の声
勤務先の企業破綻で職も家もなくし、60代でキャンピングカーでのノマド生活を余儀なくされた女性を中心に、彼女が行く先々で出会う人々との交流を描く『ノマドランド』は、昨年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したほか、各映画賞でも連勝続きのアカデミー賞大本命作だ。
ノーメイクの普段着姿で自宅から参加したクロエ・ジャオ監督は作品について「悲しみと癒しの巡礼」と語り、「つらく、でも美しい人生を歩んでいる全ての人々にこの作品を贈ります。私たちは『さよなら』とは言わず、『またいつか』と言うんです」とスピーチ。中国出身のジャオ監督は監督賞も受賞した。アジア系アメリカ人女性として初であり、女性監督の受賞は1984年のバーブラ・ストライザンド(『愛のイエントル』)以来、2度目。
ドラマ部門主演男優賞を受賞したのは、昨年43歳の若さで亡くなったチャドウィック・ボーズマン(『マ・レイニーのブラックボトム』)、同主演女優賞は『The United States vs. Billie Holiday』(原題)のアンドラ・デイ。
映画の部/助演男優賞はダニエル・カルーヤ(『Judas and the black Messiah』原題)、テレビの部/助演男優賞はジョン・ボイエガ(『Small Axe』)、と黒人俳優の受賞が相次いだが、授賞式の前に主催団体「ハリウッド外国人記者協会(HFPA)」の会員87名の中に黒人が1人もいない事実が報じられたことと合わせると、興味深い。
サプライズ受賞も相次ぎJ・フォスターが助演女優賞
映画の助演女優賞のジョディ・フォスター(『The Mauritanian』原題)を含め、本命と目された候補を差し置いたサプライズ受賞があったほか、映画部門で最多6ノミネートされた『Mank/マンク』は残念ながら、無冠となった。
今年はコロナ禍により、例年のようにロサンゼルスのザ・ビヴァリーヒルトン・ホテルでの開催は叶わず、ニューヨークとロサンゼルスに会場を分け、ティナ・フェイとエイミー・ポーラーがそれぞれの会場から2元中継で司会を務めた。
オープニングモノローグでフェイはHFPAの会員の人種の偏りや接待疑惑などについて言及。「HFPAは約90人程度の国際的な黒人抜きのジャーナリストから成り、彼らはより良い生活を求めて、毎年映画の取材旅行に出かけています」と語った。
最初に行われた映画部門の助演男優賞発表時は、史上初のZoomを介した中継がうまくいかず、受賞したダニエル・カルーヤ(『Judas and the Black Messiah』原題)がスピーチを始めたものの無音状態。プレゼンターのローラ・ダーンが切り上げようとしたが、すぐに音声が戻り、無事にスピーチすることができた。
テレビの部ではNetflix『ザ・クラウン』が圧勝
候補者たちは自宅からの参加となり、家族やペットが乱入するなど和やかな雰囲気。テレビの部/リミテッド・シリーズ部門で主演男優賞を受賞したマーク・ラファロ(『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』)は、出演作の登場人物にかけて、「この物語と同じように、私たちには瀕死の母がいます。母なる地球です。この母を敬わなければなりません」と地球温暖化への警鐘を鳴らし、「この国の残酷な過去のページをめくりましょう」「包摂性と正義、母なる地球への気遣いがあちこちで生まれています」と、共に勇気を持って生きていくことを訴えた。
そんなスピーチの合間に子どもたちが駆け寄ってハグするなど、自宅からの参加は全体的にリラックス・モード。受賞を逃した候補者たちのZoom越しの表情も穏やかで、心から受賞者を祝福しているのが伝わってきた。
アメリカでの成功を夢見る韓国人移民の一家を描くアメリカ映画ながら、セリフの大半が韓国語であることで、作品賞ではなく外国語映画賞候補になった『ミナリ』は同賞を受賞。リー・アイザック・チョン監督は自宅から7歳の娘と一緒に参加した。発表の瞬間、「私、祈ってたんだよ!」と飛びついてきた娘をハグしながら、監督は「この子のために作りました」とスピーチ。「『ミナリ』は家族の物語です。自分たちの言葉で語ることを学ぼうとする家族の物語です。それは、アメリカのどの言葉よりも、外国の言葉よりも深い、心の言葉です。私は今も学び続け、それを渡していきたい。全ての人が、互いを愛する言葉を学ぶことを願っています。特に今年は」と語った。
テレビの部/ドラマ部門ではNetflixの『ザ・クラウン』が作品賞、主演男女優賞を独占、さらに助演女優賞も受賞し、圧倒的な強さを見せた。
【第78回ゴールデングローブ賞 受賞結果】
[映画の部]
ドラマ部門
作品賞:『ノマドランド』
主演女優賞:アンドラ・デイ(『The United States vs. Billie Holiday』原題)
主演男優賞:チャドウィック・ボーズマン( 『マ・レイニーのブラックボトム』)
コメディ・ミュージカル部門
作品賞:『続ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(Amazon Prime Video)
主演女優賞:ロザムンド・パイク(『I Care a Lot』原題)
主演男優賞:サシャ・バロン・コーエン(『続ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』)
アニメーション作品賞:『ソウルフル・ワールド』(Disney+)
外国語映画賞:『ミナリ』
助演女優賞:ジョディ・フォスター(『The Mauritanian』原題)
助演男優賞:ダニエル・カルーヤ(『Judas and the black Messiah』原題)
脚本賞:アーロン・ソーキン(『シカゴ7裁判』)
監督賞:クロエ・ジャオ(『ノマドランド』)
作曲賞:『ソウルフル・ワールド』
歌曲賞:「lo si(Seen)」(『これからの人生』Netflix)
[テレビの部]
ドラマ部門
作品賞:『ザ・クラウン』(Netflix)
主演女優賞:エマ・コリン(『ザ・クラウン』)
主演男優賞:ジョシュ・オコナー(『ザ・クラウン』)
ミュージカル/コメディ部門
作品賞:『シッツ・クリーク』
主演女優賞:キャサリン・オハラ(『シッツ・クリーク』)
主演男優賞:ジェイソン・サダイキス(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』Apple TV+)
リミテッドシリーズ/テレビ映画部門
作品賞:『クイーンズ・ギャンビット』(Netflix)
主演女優賞:アニャ・テイラー=ジョイ(『クイーンズ・ギャンビット』)
主演男優賞:マーク・ラファロ(『ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』)
助演女優賞:ジリアン・アンダーソン(『ザ・クラウン』)
助演男優賞:ジョン・ボイエガ(『Small Axe』)
セシル・B・デミル賞:ジェーン・フォンダ
キャロル・バーネット賞:ノーマン・リア
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