「彼らはモンスターではなく普通の若者」
ブラック・メタル黎明期に世界をリードしたバンド「メイヘム」と、メンバーが引き起こした凶悪な事件の真実に迫った映画『ロード・オブ・カオス』が3月26日より公開される。公開に先駆け、本作を手がけたジョナス・アカーランド監督のインタビューが到着した。
舞台は1987年のノルウェー。19歳のギタリスト・ユーロニモスは、仲間とともに“真のブラック・メタル”を追求するバンド・メイヘムの活動に熱中していた。ライヴ中に自身の身体を切り付けるなど、過激なパフォーマンスは熱狂的なファンを生み、バンドはたちまちカリスマ的な人気を得ていく。さらに彼らは“誰が一番邪悪か”を競い合う集団「インナーサークル」を結成。メンバーの1人であるヴァーグが起こした教会放火事件を機に、過激さはエスカレート、誰にもとめられない狂乱に陥っていく。
コープスペイント(死化粧)を施し、過激なライヴ活動をするだけでなく、サタニズム(悪魔崇拝主義)を標榜していた彼らは、暴動、放火、果ては殺人事件を引き起こし、社会問題に発展した。本作はノンフィクション「ブラック・メタルの血塗られた歴史」を元に、事件の裏にあった若者たちの素顔と、狂気が暴走する様を、事実と虚構を織り混ぜて鮮烈に描き出している。
ユーロニモスを演じるのは、マコーレー・カルキン(『ホーム・アローン』)の弟で俳優のロリー・カルキン。長髪にしてギターの扱いを学ぶなど、撮影の1年前から綿密に役作りを行なった。
監督のアカーランドは、自身もブラック・メタルのバンド「バソリー」のドラマーとして活動。その後、ミュージック・ビデオの監督を経て映画に進出するという異色の経歴の持ち主だ。ブラック・メタルの実情や当時の空気感を知り尽くしているだけでなく、彼はできる限り親族や関係者にコンタクトを取り、細かな事実のリサーチを重ねた。事件については未だ解明されていない部分も多く、本作のストーリーは関係者の証言に、映画独自の解釈も加えられている。
過激なビジュアルや暴力性だけがフォーカスされ、世間からは“邪悪なモンスター”のイメージを抱かれているメイヘムだが、彼らもごく普通の若者で、ただ道を踏み外してしまっただけ、と監督は訴える。「ネットで彼らの名前を検索すると、ダークな音楽が流れて、おどろおどろしい声がモンスターについて語る、みたいなものばかりが出てくる。この映画を見てみれば、彼らが1人の若者として描かれているのがわかるはず。彼らは怖いモンスターではなく、普通の若い青年だったと伝えたかった」。
インタビューでは楽曲へのこだわりや、巨匠リドリー・スコット監督が本作の実現をサポートしてくれたエピソードも明かされている。
・『ロード・オブ・カオス』ジョナス・アカーランド監督インタビュー全文はこちら
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