生涯現役宣言。親の立場と子の立場両方を理解したいぶし銀の演技
本年度アカデミー賞最有力の6部門ノミネート作『ファーザー』が5月14日に公開される。このたび、本作品の主演を務めたアンソニー・ホプキンスのインタビュー映像と場面写真が公開された。
・映画『ファーザー』フロリアン・ゼレール監督インタビュー映像
インタビュー映像では、本作品で認知症の父親を演じたアンソニーが登場。演じるにあたり参考にしたのは自身の父だと明かし、「父は認知症ではありませんでしたが、最後の数週はその兆候が見えました。死を恐れるあまりとても怒っていて、目が合うだけで身がこわばりました。そんな父を思い出しながら演じたので実に簡単でしたよ」と語っている。
オリヴィア・コールマンが演じた娘のアンの役柄については、「オリヴィアはとにかく素晴らしいの一言に尽きます。アンは、父を愛しているからこそ、心を引き裂かれるんです。父の症状が進むほど、彼女の絶望は深くなります。私の父も私に対してそういう態度を取っていました。私にとっては地獄でした。でも、私には父が恐れているのが分かりました」と、認知症の父を持つ娘としての態度にも理解を示す。
さらに、“認知症と死”というテーマについては、「自分自身の人生の終わりを意識するようになり、命が美しいものに思えてきました。なぜ人は生きているのだろうか? 自分の“葉”を1枚ずつ失うのはどんな気分だろうか? 人生の勉強になりましたよ」と達観。
引退について問われると、「私はまだまだ引退する気はありません。私は老戦士ですからね。強くて生きる力がある。それに、私はあれこれ考えたり分析したりせず、ただセリフを覚えて演じます。それが脳の活性化につながります。暗記マニアなんです。おかげで脳が衰えません。シェイクスピアやエリオットなどの詩も大量に暗記しています」と生涯現役を宣言した(https://youtu.be/hPcuc4HGiA0)。
4月10日の英国アカデミー賞(BAFTA)受賞により、アカデミー賞主演男優賞受賞に向けて一歩リードといった感のあるアンソニーだが、日本時間26日に行われる授賞式は家族とウエールズで過ごすと言う。果たして、『羊たちの沈黙』以来の受賞なるか?
日本では橋爪功と若村麻由美で舞台化され話題に
本作は、誰にとっても他人事ではない老いることへの不安や、逃れることのできない親子の愛情を描いた感動作。年齢と共に誰もが経験する喪失と親子の愛を、記憶や時間が混迷していく父の視点で描く。これまでにない画期的な映画体験は、迷宮に足を踏み入れていくような戸惑いと、愛する家族が自身を忘れてしまう切なさ、人間味から滲み出るユーモアなど、様々な感情を重層的に呼び起こしながら、最後には観客を思わぬ感動へと導いていく。
この物語を手がけたのは、ロンドンのタイムズ紙が「現代において最も心躍る劇作家」と謳うフランス人フロリアン・ゼレール。舞台での上演は、フランス演劇界最高位のモリエール賞で脚本賞を受賞し、パリ、ロンドン、ニューヨークなど世界30カ国以上で行われた。日本でも2019年に「Le Père 父」のタイトルで、橋爪功と若村麻由美により上演され、大きな話題となった。
『ファーザー』は5月14日に公開される。
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