感染事例ゼロの実績を無視
緊急事態宣言下の地域で、劇場等の営業自粛ないし無観客での開催が要請されている。それを受けて、5月6日に全国興行生活衛生同業組合連合会が見解を発表した。
全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)は、全国の都道府県にある映画や演劇、演芸を行う興業組合で組織され、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(生衛法)に基づいて厚生労働省から認可を受けた団体。
今回発表された全興連の見解には、映画館等のエンタメ施設では感染リスクが比較的少なく感染事例もないのに、他業種に比して非常に厳しい要請が行われていることへの抗議が含まれている。
そのひとつは、政策に向けられたもの。
全興連が度重なるガイドライン改訂を経て、昨年12月1日以降、施設内の感染をゼロに抑え込んできた実績を無視していること、劇場等を閉鎖することによって、むしろ作品を見るために上映中の他県へ移動する人が生じ、政策目的として掲げている「人流の抑制」と矛盾する事態が起きていることに抗議している。
また、演芸場が休業要請を無視したとの一部報道に対しても苦言が。東京都からの要請に応じて5月1日より休業していることを明らかにした上で、一定の制限の下での営業再開を東京都に陳情しているという。
5月11日までとされていた緊急事態宣言は、東京都、京都府、大阪府、兵庫県に加え、愛知県や福岡県も加えて5月末まで延長される見通しとなった。全興連としても引き続き、ガイドラインの周知徹底と共に、鑑賞後は速やかに帰宅するよう呼びかけるというが、アメリカ・ニューヨークのブロードウェイが9月中旬には完全再開されるのと比べると、営業に向けた再開への見通しは立っていない。
緊急事態宣言の延長に伴う映画館・演芸場への休業要請に対して(全文)
新緑の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
今般の4都府県に対する緊急事態宣言延長が検討されている旨、報道されていますが、以下にて当会の見解を示します。
昨年の緊急事態宣言の解除後、全国興行生活衛生同業組合連合会(以下、全興連)は、興行場における換気や、飛沫の実証実験を行い、国立研究開発法人産業技術総合研究所の調査を経て、複数回のガイドライン改訂を行い、2020年12月1日以降は、感染拡大防止策を十分に講じた上で通常通りの営業を行っております。そのような対策の結果、興行場の観客席 側での感染事例は1件も確認されていないことはご承知の通りです。
現在の東京都の緊急事態措置を例にとれば、施設規模に応じて休業等を要請する施設として「映画館・プラネタリウム等」、無観客開催を要請する施設として「劇場、観覧場、演芸 場等」が挙げられています。
これらの休業要請および無観客開催の要請は、上記の実績を考慮に入れていないことは明白であり、施設内での感染リスクに対してではなく、「人流の抑制」に焦点をあてていると推察しております。
しかしながら、こと映画館の場合、作品の鑑賞を希望されるお客様が、緊急事態宣言対象外の近県の映画館に移動されることは、むしろ「人流の増加」につながる可能性さえあり、我々の経営基盤をゆるがすのみでなく、「人流の抑制」政策に合致しないことは容易に想定されるところです。実際上、今回の緊急事態宣言中の緊急事態宣言下の都府県の近隣では大幅な動員の上昇が見られるところです。
また、演芸場の無観客開催は現実的でありません。昨今の報道で演芸場が休業要請を無視したとの報道が一部見られておりますが、事実とは異なっており、無観客開催が不可能な演劇場がやむにやまれず、有観客開催をしていたところ、東京都より4月28日に実質上の休業 要請である旨の説明があらためて行われ、5月1日より休業を行っております。当組合としましては上記を踏まえ、一定の制限下の元で緊急事態宣言下でも営業を続ける 陳情をして参ります。
当然のことながら、感染防止対策には万全を期し、「全興連作成のガイドラインを再度周知徹底する。」「鑑賞後の速やかなご帰宅をそれぞれの映画館・演芸場でお客様に対し呼びかけを行う。」といった施策にもより注力いたします。
また、我々は大事なお客様が安心してエンターテイメントを楽しんでいただく日が一日も早く来るために、昨年来さまざまな協力をしてまいりました。このような努力の元、当業界の感染リスクが比較的少ないことは、政府にもお認めいただいているところです。しかしな がら、他業種に比しても非常に厳しい要請をされている現状の是正も訴えていきたいと考えております。
末筆ながら、新型コロナウイルス感染症と向き合う政府・自治体関係機関の皆様、医療従事者の皆様、そして、感染の終息に向けてご尽力されるすべての皆様に心から感謝を申し上げます。
以上
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