映画ファンドはどうなる? 「JDC」が一部業務停止命令受ける
金融庁は6月18日、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ5冠をを達した『フラガール』を資金面で支援してきたジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC)に対し、3か月の一部業務停止と業務改善命令を打ち出した。金融庁によると同社は、顧客から預かった信託財産のうち、約3億円を借金返済に流用するなどしていたという。
ここに来て、映画などに出資するコンテンツファンドが頭打ちの状態になっている。当たり外れが大きいと言われる映画に対し、ファンドが出資する動きがはじまったのが1990年代後半のことだ。
まずは、1998年には通産省(現、経済産業省)の肝いりでJDCが設立され、7億円の東京マルチメディアファンド(TMF1)の運用が開始。同年には、『レインメーカー』など4作品の洋画の買い付け用に組成されたパリバ・ギャガシネマファンド1《クランク・イン》も発売された。
以降、日本でも、数億〜数十億円クラスの資金をプールし、映画やゲームなどに出資するタイプのファンドと、作品ごとに組成されるファンドの2種類が運用されていく。前者の代表格が、冒頭にも記した『フラガール』のシネカノンとJDCが生み出した「シネマ信託〜シネカノン・ファンド第1号〜」。総額46億円を集め、シネカノン代表の李鳳宇(り ぼんう)氏の目利きの元、同社が製作・配給する20作品が投資対象とされた。一方、後者の代表格となるのが「忍−SHINOBIファンド」や「北斗ファンド」だ。
だが、シネカノンは『フラガール』以降、目立ったヒットがなく、2006年10月31日に償還を迎えた「忍−SHINOBIファンド」も元本割れ。信託期間満了日が2010年3月31日と、まだこれからの「北斗ファンド」など、今後に期待が持てるものもあるが、全体としてコンテンツファンドは利益を出せず、投資家に損をさせている状況は否めない。
そもそものはじまりは、日本にも優れたクリエイターがいて、良いアイデアを持っているのにも関わらず、製作資金が集まらないと言った問題点があったから。そうした企画に資金を与え、将来的に輸出産業に育てようという高い志があっただけに、このまま頓挫していくのは残念なこと。
また、映画界全体を見渡しても、昨年、739億円の年間興収を上げ、3年連続で記録を更新した東宝のような勝ち組もある。そもそも、本当に良い企画は、ファンドの支援を求めるまでもなく出資者が集まると言われている。そうした意見を払拭するためにも、ファンドは今後、より良いパートナーと手を組み、投資家に満足のいくリターンを与えられるよう務めていくことが求められている。
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