この小説の映像化なしには死ねない。山崎豊子の傑作小説を映画化!

左から三浦友和、渡辺謙、石坂浩二
左から三浦友和、渡辺謙、石坂浩二
左から三浦友和、渡辺謙、石坂浩二
渾身の力を込めたと語った渡辺謙
左から若松節朗監督、三浦友和、渡辺謙、石坂浩二、製作総指揮の角川歴彦

『白い巨塔』『華麗なる一族』をはじめ、その作品が次々と映像化されてきた国民的作家・山崎豊子。そんな中、様々な要因から映像化は不可能と言われてきたベストセラー『沈まぬ太陽』が、ついに映画化され、10月24日から全国で拡大公開される。7月8日には映画の製作報告会見も行われ、渡辺謙、三浦友和、石坂浩二らキャストと若松節朗監督、製作総指揮の角川歴彦(つぐひこ)が出席し、映画への深い思いを真摯(しんし)に語った。

原作は、1985年の日航機墜落事故を軸にしたノンフィクション小説で、日本を代表する航空会社の腐敗ぶりがあぶり出されていく。登場する国民航空は日本航空をモデルとしており、様々な方面で物議を醸した作品だ。そのため、どこも映像化には及び腰だったという。そんな中で映画化を英断した角川は、「映画会社だからこそできる大作。この作品は社会派映画の王道を貫いている」とコメント。ドラマ人気に便乗した作品を連発するテレビ局主導の映画製作とは一線を画する、気骨ある作品であることを強調した。

一方、「ずっとこの小説を映画化したいと思っていた」という若松監督は、山崎豊子から「この小説の映像化なしに私は死ねない」と言われたことが、完成にこぎ着ける一番の推進力となったことを明かした。

腐敗した国民航空に立ち向かう主人公を演じた渡辺は、実在の人物や事件に着想を得た作品だけに、「日本の方々にどう受け止められるか悩んだ」という。だが、「去年の後半から、経済や社会で思ってもみなかった急変があり、生きる意味、会社とは何なのかが毎日のように囁(ささや)かれるようになり、この小説が今まで映像化されなかったのは、このタイミングを待っていたような気がした」と、ベストのタイミングで公開される作品であることを語った。

主人公とは対照的なエリートコースを歩む男を演じた三浦は、「全部ではないけれど」としながらも、経済界や政治にも切り込む気概のあるアメリカ映画への敬意を示した上で、「この作品をやっていて、(日本も)少しずつ時代が変わっていくのかと思う反面、まだ会社に切り込んでいけない重苦しさがあるようにも感じた」と、社会に対する複雑な思いを口にした。

映画はほぼ完成しているというが、全5巻にもわたる小説をどうまとめ上げたのかについて聞かれた若松監督は、「今は、企業が個人に優しくない時代。そんな今だからこそ、巨像に立ち向かった男を描かなければと思った」とした上で、根底に日航機墜落事故の話が流れる中で、主人公の男の矜持(きょうじ)を前面に押し出したと教えてくれた。

イラン、ケニア、タイなどでもロケを行った力作だけに、気になるのが製作費。角川によると「製作費は20億円。稟議書にハンコを押すときに手がふるえた」とのこと。配給元の東宝によると、現在330スクリーンでの上映が決まっていて、劇場側の期待も大きいそうだ。

会見では原作者・山崎豊子のメッセージビデオも流れ、「主人公は、不条理を糺(ただ)したゆえに、周囲から徹底的に疎(うと)まれる状況の中、不屈の精神で立ち向かう清冽な企業人です。索漠(さくばく)とした希望の見えない現代において、映画『沈まぬ太陽』が荘厳な光として輝き、明日を約束してくれることを、切に切に祈ります」と語っていた。

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