7月16日〜23日にかけ、韓国で開催された「第13回富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭(PiFan)」。この映画祭で、日本の若手監督・入江悠の『SR サイタマノラッパー』が、全上映作品(202作品)中、もっとも優れたアジア映画に与えられる「NETPAC賞」に輝いた。
同作は、レコード屋もライブハウスもないサイタマ県の片田舎で、ラッパーを目指す若者たちの夢と挫折をコミカルに綴った青春映画。今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭では、オフシアター・コンペティション部門でグランプリに輝いている。
また、作品の面白さが評判を呼び、3月14日に池袋で封切られて以来、地方の映画館が次々と上映の名乗りを上げ、これまでに名古屋、札幌、広島、仙台、松本など、十数の劇場で公開されてきた。インディーズながら、映画祭の審査員のみならず、興行関係者までもが注目する入江監督は、今、もっとも活躍が期待される若手クリエイターの1人なのだ。その入江に、プチョン映画祭のことから次回作のことまでを語ってもらった。
──ゆうばり映画祭には何度か行っていますが、今回は海外の映画祭。観客の反応は気になりました?
入江:すごく心配しましたね。字幕で通じるのかという思いもありましたし。ただ、字幕は映画祭の方がつけてくれたのですが、ヒップホップの映画と言うことで、ヒップホップがわかる方を監修に入れてくれたようで、かなり評判が良かったですね。あと、早い段階でチケットが完売になったと聞いていたので、少しは安心していました。とはいえ、上映がはじまるまでは、やはり不安がありました。
──上映が終わった後の観客の反応はいかがでした?
入江:韓国のお客さんの反応が予想以上に良く、満席の客席からは笑いが起こり、上映後には自然と拍手も起こったんです。それがなによりも嬉しかったですね。海を渡っても映画は伝わるんだということが実感できました。
──ティーチイン(観客との質疑応答)もあったようですが、どんな質問が多かったですか?
入江:基本的に日本と同じような質問が多かったですね。「何で長回しが多いのか?」とか「日本のヒップホップはどうなのか?」とか。
──長回しが多い理由は?
入江:最長で7分くらいの長回しがあるのですが、カッコイイ編集にしたくなかったというか、ダメな空気感を出したかったんですね。
──では、NETPAC賞を受賞した感想は?
入江:まったく予想していなかったので、壇上から呼ばれたときは、正直、驚きました。現在、9月にクランクインする次回作の準備をしているんです。今度は群馬が舞台で、女性ラッパーチームの話。仮タイトルは『椿姫〜女子ラッパーの憂鬱〜』なのですが、この作品を完成させて、また海外に持って行けたらいいなと思っています。
なお、『SR サイタマノラッパー』は、すでに韓国配給も決まっているほか、入江監督は、映画祭の企画マーケット(映画の企画をプレゼンし、出資者などを募るイベント)にも参加。次回作『椿姫〜』のプレゼンも行ったという。
『SR サイタマノラッパー』は8月29日〜9月4日まで、沖縄の桜坂劇場でも上映予定。
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