現在、開催中の第66回ヴェネチア国際映画祭(9月2日〜12日開催)。そのコンペティション部門に出品されている日本映画『TETSUO THE BULLET MAN』が、9月5日深夜(現地時間)に公式上映され、キャストのエリック・ボシック、桃生亜希子らと塚本晋也監督、プロデューサーが出席した。審査委員長のアン・リーらも姿を見せる中で、上映後には5分も続くスタンディングオベーションを受けるなど大好評で迎えられた。同日には記者会見も行われ、世界中から数多くの報道陣が集まり、たくさんの質問が飛び交った。
1997年と05年に同映画祭の審査員も務めるなど、塚本監督にとってはなじみ深い映画祭。また、98年『THE BULLET MAN』、00年『双生児』、04年『ヴィタール』が上映され、02年には『六月の蛇』でコントロ・コレンテ部門審査員特別賞を受賞。今回が5度目の正式出品で、栄えあるコンペティション部門には初めての出品となる。
『鉄男』(89)『鉄男 II BODY HAMMER』(92)に続く本作。記者会見で塚本監督は、「アメリカで『鉄男』を撮るという話もあったが、頭の中にあるグチャグチャしたものを表現するようなこの作品は、向こうの合理的なプロデューサーと作るのが難しく、結局、実現しなかった」と振り返り、以来、チャンスをうかがっていたことを明かし、「昔ながらのやり方で、自分の仲間たちと好きなように作る方法でやることにしました。結果的に、シンプルで力強く、前2作のままの気持ちに、今の新たな感情をプラスしたものができたと思います」と語った。
また、作品作りの背景について、「今の東京は、戦争体験者も少なくなり、多くの人が、生と死の切実な実感が持てずにいる。それだけに暴力ももっと加速し、より恐ろしい電脳都市になってきたと感じます」と話した上で、「暴力は自分にとってある種のファンタジー。これまでは東京で悲惨なものを目にする機会もあまりなかったから、ファンタジーとして描いてきましたが、最近は笑えない事件が多くなっている。それだけに作り手として慎重にはなっていますが、人間の本能には、そういうものを見たいという気持ちもあると思う。実際に暴力を振るわない代わりに、それを映画で見て味わうことがあってもいいのではないかと思う」と、クリエイターとしての考えを示した。
これまで、『羅生門』(52)『無法松の一生』(58)『HANA-BI』(97)が最高賞の金獅子賞を受賞。絶賛された『TETSUO THE BULLET MAN』への期待も高まっている。
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