負は相変わらず昨日と同じように、今日もそこにある
佐藤二朗の監督作2作目となる映画『はるヲうるひと』が6月4日より公開。佐藤が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年、2014年に公演した同名舞台を映画化。佐藤自ら映画用に新たに脚本を書き、監督と出演も果たす意欲作だ。ムビコレでは佐藤、主演の山田孝之、妹役の仲里依紗、それぞれにインタビューを敢行した。
「試しに笑え、無理でも笑え」過酷さを耐える人間描いた監督作で高評価/『はるヲうるひと』佐藤二朗インタビュー
舞台は架空の島の売春宿=置屋。置屋を経営する暴力的な兄・哲雄(佐藤)に虫けらのように扱われながらも、妹のいぶき(仲)を守り懸命に生きようとする得太(山田)。閉ざされた島で、孤独と悩みを抱え、必死にもがきながら生きる人々を映し出す。
舞台、映画にドラマ、番組MCと多方面で活躍し、コミカルな演技のイメージが強い佐藤。しかし本作で表現したのはそれとは真逆の、暴力と苦しみにただ黙って耐えるしかないような世界だ。そんな世界を描く理由を佐藤はこう語る。「負を抱えた人間がいて、その障害が最後には全部取っ払われていいことになる作品はあんまり興味がないんです。負は相変わらず昨日と同じように今日もそこにあるのに、明日もちょっと生きてみようかって思う話にグッとくる。明日も生きてみようか、というほんの些細なことで思うところに、すごいドラマを感じるんです」
舞台版では自分が演じた得太役に山田孝之を起用し、監督をこなしながら兄・哲雄を演じ切った。「僕は本当に、山田孝之が日本で最高レベルの俳優だと思ってるので、孝之がOKしてくれた時点で、この映画の製作の永森さんから『じゃあ哲雄の役、二朗さんやれば』と言われて、それはありかもな、ということで僕がやろうと思いました」
山田の他に、仲里依紗、向井理、坂井真紀らが映画版キャストとして加わったが、置屋で働く遊女役は舞台版のキャストが続投。『はるヲうるひと』の生みの親である佐藤が、舞台から映画へと育て上げた作品が、コロナ禍による1年延期を経てようやく公開を迎える。佐藤二朗のインタビュー全文はこちら。
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