リチャード・カーティス監督『パイレーツ・ロック』について語る

リチャード・カーティス監督
リチャード・カーティス監督
リチャード・カーティス監督
船上での撮影風景。左からフィリップ・シーモア・ホフマン、リス・エヴァンス、リチャード・カーティス監督

『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』など、数多くの話題作の脚本を手がけ、『ラブ・アクチュアリー』で監督デビュー、高い評価を得たリチャード・カーティス監督。彼の最新作が、現在公開中の『パイレーツ・ロック』だ。

ブリティッシュ・ロックが世界を席巻していた1960年代のイギリスを舞台に、海賊放送のDJたちのゴキゲンな生活をコミカルに描いた作品。当時のイギリスでは「俗悪」なロックは1日45分しか放送できなかったため、半分以上の国民がこぞって海賊放送に耳を傾けていたわけだが、海賊放送撲滅を目論む大臣と、一筋縄ではいかないDJたちのバトルに大笑いさせられる。

物語の背景となるロック音楽規制は事実で、ビートルズ、ローリング・ストーンズなど数々のロックグループを排出したイギリスにそんな過去があったことに驚く人もいるはずだ。1956年生まれの監督は、「夜、ベッドに入り、枕の下に小さなトランジスタラジオを忍ばせてスイッチを入れると、ほかでは聞くことのできないすばらしい声、すばらしい音楽を聴くことができたんだ。僕の世代の誰もが、同じ記憶を共有していると思う」と語る。「これこそ、僕がポップミュージックを大好きになった理由のひとつなんだ。つまり、ちょっと不法なことをしている、許されないことをしているっていう感覚がね」。

主演は、『カポーティ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優フィリップ・シーモア・ホフマン。本作では、ロックと自由を愛するDJ「ザ・カウント(伯爵)」を楽しそうに演じている。監督は、そのフィリップについて、キャストの1人ビル・ナイが「世界最高の俳優で、変幻自在のすばらしい才能の持ち主」と言っていたことに触れ、「僕も、フィリップがセットに足を踏み入れた瞬間の変身ぶりに、まったく同じことを思った。見事なまでに自然で、本当にすばらしかった」と話していた。

法律をかいくぐるため、DJたちは海の上からラジオを放送しているという設定で、これが撮影における最大の困難の要因となったという。

監督は、「最も大変だったのは、実際に船で海に出ることだったんだ。水上の撮影は殺人的に大変だった」と語る一方、「でもそれは、この映画の最もすてきなところでもあったんだ」と笑顔を見せる。毎日ランチ時には60年代の懐かしい音楽をスピーカーから響かせていたそうで、「映画の撮影よりも、ランチ・タイムの方が思い出深いんだ」と明かした。

誰もが一度は耳にしたことのある懐かしい「名曲」が次々に流れ、思わず口ずさみたくなってしまうが、監督が映画を作る際にまず考えたのは、「お気に入りの曲をすべて入れられないかということだった」という。「2人の恋人たちがキスする瞬間だけでなく、全編を通して音楽が流れるんだ」。そしてもうひとつ、「とにかくテンコ盛りにしようと思った」と監督。「とびきりおかしいだけでなく、ラスト30分はアクション映画でもある。『ラブ・アクチュアリー』もそうだけど、あれとは違った形でたくさん詰め込もうと思ったんだ」。

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