汚れた金しか奪わない、仲間は決して裏切らない、女を愛し抜く──大恐慌の時代、1930年前半のアメリカで、人々から絶大なる人気を得ていた伝説の銀行強盗ジョン・デリンジャー。その逃亡劇を描いた『パブリック・エネミーズ』に主演したジョニー・デップが来日し、12月9日、グランドハイアット東京で記者会見を行った。
[動画]ジョニー・デップ『パブリック・エネミーズ』 記者会見
300人の記者にスチールカメラが210台、ムービーカメラが80台と、すし詰め状態の熱気あふれる会場に姿を現したデップ。飄々としたたたずまいが印象的だが、劇中では激しく生き急ぐ主人公を熱演している。演じたデリンジャーについて彼は、「デリンジャーとは、いろいろと通じ合う部分があり、とても惹かれた。生まれた場所が近く、ワイルドで反抗的な子ども時代を送っていたことも似ているかな。彼は銀行強盗で人を傷つけないなど、敬うべき点が多い男だと思う」と敬意と共感を示した。
クリスチャン・ベイル扮するFBI捜査官とデリンジャーとの男同士の戦いが、見る者を圧倒する本作。「エネミーズ(敵)」と、単数形ではなく複数形のタイトルになっているのは、「社会の敵」にFBIを含むからかという質問には、「もちろんです(笑)」とデップ。「彼はFBIの陰謀で“暗殺”されたのだと思う。そういう死に方をした男に、僕なりのオマージュを捧げたいと思った」と出演の理由を語った。また、大恐慌を生き抜き、昼は市バスの運転手、夜は密造酒を作り、苦労して子どもたちを育てた祖父について触れ、「個人的なことですが、そんな祖父にもオマージュを捧げるつもりで作りました」と続けた。
愛した女性を守り抜こうとする主人公の姿も胸を打つが、危険な香りのする男に惹かれていくヒロインの思いについて聞かれると、「なぜかは分かりませんが、男女の関係は、危険だから惹かれるという部分があると思います(笑)。デリンジャーは絶対妥協せず、確固たる自己を持つ、意志の強い男。あらゆる意味で女性を惹きつけるカリスマ性を持っていたのだと思います」と、男性としての魅力を讃えた後で、「30年代というのは、詩的でロマンのある時代でした。そんな時代に自分のやり方を貫き通したデリンジャーを尊敬します」と語った。
撮影の苦労について聞かれると、「森の中での撃ち合いシーンはとても危険で、怖さも感じました。7000発の実弾を使ったので、撃たれた物の破片が飛び散っていました。また、エモーショナルな場面では、自分の内面をさぐり、演じることが大変で、苦労しました」と教えてくれた。
また、タイトルにちなみ、一番の「敵」は何かとたずねると、「一番の敵は自分自身の中にいます。自分で限界を区切ってしまう、あるいは、妥協してしまう部分が僕にもあるので、そんな内なる敵が一番怖いと思います」と打ち明けた。
『ヒート』『インサイダー』『マイアミ・バイス』など、男の矜持を描き続けてきたマイケル・マン監督については、「彼も絶対に妥協しないパワフルで素晴らしい監督。自分の仕事に情熱を持っていて、どんなシーンでも自分の意見がある。そして何度も撮り直しをして、俳優からよりよい演技を引き出してくれる監督」と絶賛していた。
クリスマスも間近だが、最後に「メリー・クリスマス&グッドナイト!」と挨拶し、「独創的なメッセージだろ?」と子どものような笑顔を浮かべた。そして、「映画を楽しんでください。またすぐ日本に来たいと思います」とコメントしていた。
『パブリック・エネミーズ』は12月12日より全国公開される。
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