身長112センチの青年、最期の2年間を凝縮した映画『愛について語るときにイケダの語ること』
「いちばん良かったのは、愛することができないダメな人だったことが映っていること」
四肢軟骨無形成症(ししなんこつむけいせいしょう、通称コビト症)により余命宣告を受けた青年・池田英彦の初主演・初監督にして遺作『愛について語るときにイケダの語ること』が、6月25日に公開される。
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公開期間中は、連日、映画監督の原一男や、エッセイストで漫画家の能町みね子らが日替わりで登壇し、トークイベントを開催する。
また、著名人からのコメントも寄せられており、関心の高さがうかがえる。
ライターで翻訳家の鈴木沓子は、「ドキュメンタリーは、あらかじめ用意していた構成台本から逸脱したハプニングであり、虚実皮膜の間(あわい)にあるということ」とした上で、「おそらく“愛”というものも、そういうものなのかもしれない」と問題提起した。そして本作品について、「イケダさんが生涯をかけて企画した自分自身についての映画は、極めてパンクなやり方で、改めてそのことを教えてくれた」と評価した。
また、作家で脚本家の狗飼恭子は、「物語の力とその無力さを、現実の残酷さとその美しさを、あらためてイケダに教えてもらった気がします。あの美しいラストシーン、たぶん一生忘れない」と賞賛。
ラッパーのダースレイダーは、死について自覚的なイケダについて、「日々ふらふらと不安で慌てている僕らを見ながら、聖人イケダは当たり前のように俗を浴びて笑う」と笑顔の意味を分析。
そのイケダの笑顔について、「底抜けに魅力的」と言うのが、映画監督・テレビディレクターの村上賢司。「いくらでも泣かせることができるのに、それをしない誠実な編集と構成。同業者としては悔しさありの傑作でした」と脱帽した。
女優の小沢まゆは、余命宣告を受け残された時間で何をしたいかについて、「イケダさんの行動は突飛に見えて私は妙に共感した」とした上で、「彼が求めるものが肉体的繋がりから精神的繋がりへ移行していく様に、生と性のリアルが見える。生々しくて清々しい」と評価。
また、オペラ歌手の平野和は、本作品を、「モーツァルトのオペラ“ドン・ジョヴァンニ”を見た後の様な心境」と例えた。
一方、AV監督で作家の二村ヒトシは、本作品が、1人の男性の様々な欲望も含め自分自身を記録しようとした欲望の塊でありながら、「いちばん良かったのは、彼がぼくと同じように、愛することがうまくできないダメな人だったことまで偶然(必然?)映ってしまってるところ」と、オトコ目線での興味深いコメントを寄せている。
性愛への傾倒、そして「真の愛とは?」の問いに揺らぐ恋愛観
本作品は、四肢軟骨無形成症の池田英彦(1974〜2015年、イケダ)が、39歳の誕生日目前でスキルス性胃ガンのステージ4と診断されてから42歳で死去するまでの、虚実入り混ぜた映画作品。
余命宣告を受けたイケダが「今までやれなかったことやりたい」として記録の対象に選んだのは、自分と女性のセックスをカメラに収める“ハメ撮り”。その希望に、20年来の友人である脚本家の真野勝成が協力し、2年間で撮影された素材は60時間超にものぼった。
一方で、イケダの考える「理想のデート」を、俳優・毛利悟巳(ドラマ『相棒15 元日スペシャル』)とともに撮影。それにより、イケダは虚実の間を彷徨い始める……。
監督・主演は池田英彦。プロデューサー・撮影・脚本は、ドラマ『相棒』の真野勝成。共同プロデューサー・構成・編集は、『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』の佐々木誠。
池田の死後、真野が遺言に従い佐々木と共に完成させた映画『愛について語るときにイケダの語ること』は、6月25日より公開される。
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