3月22日に閉幕したフランス映画祭で、3月19日に上映されたのが『オーケストラ!』だ。上映後にはラデュ・ミヘイレアニュ監督、主演のアレクセイ・グシュコブ、そして、ゲストとしてシャンソン歌手のクミコが登壇、トークショーが行われ、会場は大いに盛り上がった。
『オーケストラ!』は、30年前にロシアのボリショイ交響楽団で、ある演奏がきっかけで指揮者としての地位も名誉も失い、今は同劇場で清掃夫として働く主人公が、ヒョンなことから、ニセのボリショイ交響楽団を結成し、パリ公演を目指すというストーリー。
「涙が出るほどハッピーで、この不況のなかで幸せな気持ちになれたことを非常に幸運だと思った」。そう話すクミコから「最初から結末を、こんな風にしたいと思っていたのか」と聞かれたラデュ監督は、「シナリオを書くときに、まずラストを考えてから書きます。この作品の場合も、最後の成功を、そして、人間の尊厳を取り戻した人たちを描きたかった」と映画に込めた思いを語っていた。
その監督の前作『約束の旅路』を見たという観客からは、「前作と今作、両作品には共に“自分以外の誰かになりすます”という要素が入っていますが、これは監督のテーマなのでしょうか?」という質問が寄せられた。
これに監督は「私は4作品作っていますが、4作ともなりすまし、偽るということが大きなテーマになっています。私の映画のなかに出てくる人物は、いろいろと小さなウソをついて、自分の運命や幸福を、もう1度取り戻さなければいけない状況におかれています。ですが、実際の世界では、もっと大きなウソがあるんです。それは政治家がつくウソや歴史のなかでつかれるウソです。この映画の場合、ブレジネフは幸福を約束したにも関わらず、ある人たちの運命を破壊していった。それが大きなウソにあたります」
また、主人公の指揮者を演じたアレクセイは、別の観客から「タクトを振る練習をどれくらいしたか? そして、今、オーケストラでタクトを振る自信ががあるか」と聞かれると「もし、この場に55人の楽団員が現れて、自分がタクトを振るとしたら、自信をもって指揮を執れます。ただし、(映画で演じた部分の)12分だけですが……」と語り、会場を笑わせていた。
『オーケストラ!』は4月17日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開となる。
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