北朝鮮に暮らすある家族の悲劇を通じ、北朝鮮の人々の日常と強制収容所の実態を描いた『クロッシング』。『火山高』『彼岸島』などスタイリッシュな作品を手がけてきた韓国人監督キム・テギュンが脱北者100人以上に取材し4年の歳月を費やして完成させた本作は、第81回アカデミー賞外国語映画賞の韓国代表作品にも選ばれた話題作だ。
この映画が4月17日に公開初日を迎え、拉致被害者家族連絡会前代表の横田滋・早紀江夫妻と、テレビプロデューサー石高健次氏がトークイベントを行った。
97年、夫妻の長女・めぐみさんの拉致を最初に突き止めた石高氏は、「当時、横田さん夫妻に『国交がないので、解決までに5、6年かかるかもしれませんね』と言ったのですが、あれから13年が経ちました。何とかしてくれというのが、横田さんのお気持ちだと思います」と、一向に問題が解決しない現状に悔しそうな表情を浮かべた。
一方、突然のめぐみさんの失踪に泣いて苦しんだという早紀江さんは、「今もめぐみの消息がつかめないということに、疑問やいらだたしさを感じています」と心情を吐露した。
やむを得ぬ事情で脱北者となった父親と、北朝鮮に残された母子の姿を描いた本作の感想については、「『かわいそう』だけではすまない問題だと感じました」と滋さん。さらに、脱北者の日本での受け入れ条件を緩和するための北朝鮮人権法の改正について語り、より多くの人々が脱北者保護への理解を示してくれるよう訴えていた。
その後の囲み会見でも滋さんは、「(北朝鮮人権法の改正については)拉致問題と直接は結びつかないと思うが、北朝鮮で苦しんでいる人々を少しでも助けたい。これは人道的な問題」だとコメント。早紀江さんも「みんなが見ないといけない素晴らしい作品だと思います。学校などでも上映していただければ」と話していた。
この日は、内閣で拉致問題を担当する中井洽(なかい・ひろし)国家公安委員長も作品を鑑賞。「壮絶すぎて考えさせられた。拉致だけではなく、人権についても考えていき、今後もいろいろな活動を行っていきたい」と話していた。
『クロッシング』は渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開中。
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