『24』のジャック・バウアー、『プリズン・ブレイク』のマイケル・スコフィールド。海外ドラマを盛り上げてきた彼らに次ぐキャラクターとして、2009年に日本上陸を果たしたのが『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』の主人公で、元スパイのマイケル・ウェスティンだ。
物語は、世界中で活躍してきたスゴ腕スパイのマイケルが、ヒョンなことから解雇通告を受け、命からがら、故郷のマイアミに戻り、自分が解雇された理由を探しつつも生活のため、昔の仲間と共に何でも屋をはじめるというもの。日本テレビでも地上波放送がはじまり、人気急上昇中の本作だが、全米ではすでにシーズン3の最終エピソードが3月4日に放送されており、シーズン4の製作決定も発表されている。
話題のドラマが続々と打ち切りになっていくなか、なぜ『バーン・ノーティス』は人気を保つことができるのか? 視聴者を飽きさせないその魅力を、生みの親であるマット・ニックスに話を聞いた。
──マイケルのキャラクター設定を元CIAか元FBIか、あえて曖昧にしていると聞いたのですが、真相を教えてください。
マット:OK。まず、CIA捜査官のできることは限定されているんだ。そしてFBI捜査官はアメリカ国内で活動している。なので、マイケルはいろいろな機関のために働いていて、過去にCIAと共に働いたこともあるという設定にしてあるんだ。とはいえ、CIAだけじゃない。アメリカには、ほかにもいろいろな諜報機関があるし、それぞれの必然性も違うんだ。
だからもし、CIA捜査官に限定してしまうと、アメリカ国内で活動ができなくなってしまう。でも、マイケルにはアメリカ国内でも活躍してもらわなくてはならないし、アメリカ国内で過去に活動したという設定にしたかったから、CIA捜査官と限定することができなかったんだ。
──マイケルはCIAを敵に回していると考えてもいいのでしょうか?
マット:CIAはマイケルの解雇には関与しているよ。解雇通告というのは、世界中の諜報機関にも通達されるものなんだ。「この人は殺人者です」とか、「この人は泥棒です」とかね。だからCIAはマイケルの解雇に関与したことになる。
とはいえ、シーズン2で、マイケルの敵がCIAの人間ではないことがわかるんだ。ほかの何かがマイケルの敵であるってことがね。
──そもそも、元スパイという着想はどこから得たのですか? また、このドラマの最大の魅力は何だと思いますか?
マット:この番組にかかわっている友人がいて、当時、その彼は企業のために世界中のさまざまな機関で仕事をしていた人物なんだ。彼と話していて、1人の人間としての彼と、彼の持っているスキルがどこに由来しているかを知ったんだ。そして、彼がそのスキルをどういう風に活かしているかをね。
僕が面白いと思ったのは、ほかのスパイドラマでは、スパイのスキルは、相手のスパイに対して使っているけど、僕が注目したのは、そのスパイとしてのスキルがどこから来て、誰がスパイになるかを決めていて、スパイたちの家族がどんな家族なのか、ということ。さらには、もしスパイが普通の人のために働いてくれたらどうだろう? という点にも面白さを感じたんだ。だから、ほかのスパイドラマとの違いは、視聴者にそれが実際にどんな感じなのかを見せてあげられることと、今まであまり見たことのない、スパイのテクニックを披露しているところだと思うね。
──主人公のマイケル役にジェフリー・ドノヴァン、マイケルの元カノでやり手のフィオナ役にガブリエル・アンウォーを起用した理由を、オーディションのエピソードなどを交えて教えてください。
マット:まずはガブリエルから話そう。オーディション用に、あるシーンを演じてもらうんだけど、それがパイロット版にもあった、マイケルが怪我を負ってベッドで寝ているシーンだったんです。そのシーンで僕が紙に書いたのは「寝ていたマイケルが目を覚まして、フィオナと話し出す」という描写でした。オーディション中は多くの女優がその指示通りに演じるのを見ていましたが、そこにガブリエルがやってきて、彼女はセリフを言う前に、ベッドを蹴り飛ばしてマイケルを起こしたんだ。それを見た僕は、すぐに家に帰ってガブリエルがやったように脚本を書き換えた。ガブリエルのおかげでフィオナがどんなキャラクターなのか決まったわけさ。
一方、ジェフリーの場合だけど、パイロット版のオーディションというのは大抵、誰もが知っている大スターをキャスティングしようという話から始まるものなんだ。ただ、大スターで決まらない場合に備え、並行して、オーディションも行うんだよ。とはいえ、大スターを決めなきゃならないのもわかっていたし、上からもそう言われていた。
そんな中、ジェフリーがオーディションにやってきたんだ。僕は全オーディションを見ているし、その日も50回は同じシーンを見ていた。そこにジェフリーがやってきて、電話で話すシーンで電話に向かって大声で怒鳴った後、アドリブで次々とセリフを足していって、僕を笑わせたんだ。50回も見ている僕をね。
その後はもう、オーディションにやって来た人に対して、僕は「ジェフリーほど良くないな」と思ったり、別の候補スターの話し合いのなかでも「彼はジェフリー・ドノバンほど良くないよ」なんて言うようになっていたんだ。そして、うまい具合にジェフリーをキャスティングできるようになった。
次に、テレビ局の人たちにジェフリーを起用する旨を伝える段階になった。彼らも別のドラマでジェフリーのことは知っていて、彼らを交えたオーディションにジェフリーがやってきた。彼の歩き方は、見てもらえればわかるとおり、力強くて自信にあふれている。おかげでジェフリーがやって来るなり、部屋にいた人間全員が、マイケル役は彼に決まりだと確信したんだ。
ジェフリーが出て行ったあと、スタジオのトップの1人が僕の方を向いて、「今まで見たなかで1番自信のあるオーディションだった」と言ってくれた。僕はこの役にはジェフリーが欲しいと思っていたし、ジェフリー自身もこの役が自分のものになったことを分かっていた。あとはみんなも首を縦に振るしかなかったのさ。
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