高畑勲や大友克洋も絶賛!「風刺されて怒り出すのは、ユーモアが足りないから」
#The Magnificent Life of Marcel Pagnol#アニメーション#インタビュー#シルヴァン・ショメ#バンド・デシネ#フランスアニメ#ベルヴィル・ランデブー#大友克洋#風刺#高畑勲
その独特の作風とユーモアセンスはバンド・デシネがルーツ
アカデミー賞長編アニメーション映画賞と歌曲賞にノミネートされ、高畑勲監督も絶賛した21世紀フランス・アニメーション伝説の傑作『ベルヴィル・ランデブー』が7月9日に公開される。このたび、シルヴァン・ショメ監督のインタビューが行われた。
・夏の風物詩“ツール・ド・フランス”を舞台にしたアニメ、見たら病みつき
聞き手はアニメーション研究・評論の土居伸彰。
ショメ監督はまず、長編アニメーションに大人向けのものが増えてきたことついては歓迎しながらも、「ただ、私は大人だけというのでなく、大人と子ども、あらゆる世代の人が楽しめるものを作りたい」と狙いを語った。
また、本作品のカオス&グロテスクな表現については、自身がフランス特有の細密な漫画、バンド・デシネにルーツを持つことを明かし、誇張や風刺(カリカチュア)を重視しているからだと説明する。
「私は自由に描くことができるから漫画が好きだし、自由のために描いているのです。政治的に正しいという点では、今やカリカチュアするだけで怒り出す人がたくさんいます。それはみんながユーモア・センスを失ってしまったからです。問題を解決するのに必要なのはユーモア・センスであって、人を黙らせようとすることではありません」と持論を述べた。
監督は、ノルマンディーのバイユーに映画学校を設立している。その狙いについて、「私が映画を制作した際、多くの若いアーティストと仕事をし、それを通じて若者の育成に関わりました。教えるのが好きですし、自分のアニメーションへの情熱と技術を次の世代に伝えたいのです」と語った。
最後に、現在準備中の新作についてもコメント。「フランスの国民的作家であり映画作家だったマルセル・パニョルの伝記映画『The Magnificent Life of Marcel Pagnol』を準備中です。パニョルは映画スタジオや配給会社を作り、トーキー映画の普及に貢献しました。老人となり、創作の意欲をなくしたパニョルが、何にでも興味をもっていた子ども時代の彼自身と対話をするという形で語られます。忘れてしまっていた自分の中の子どもとコミュニケーションすることで、もう一度共通するものを取り戻そうとするのです。今回は作家、劇作家、映画監督なので、映画にはセリフがあるようにします。今までの作品とは違ったアプローチになります」とのことで、こちらは2年半後の完成を目指す。
高畑勲や大友克洋が絶賛! 最愛の孫を助けにマフィアと対峙するおばあちゃんの奮闘劇
本作品は、おばあちゃんと孫のシャンピオンの愛に満ちた物語。
内気な少年・シャンピオンが情熱を傾けるのは自転車レース。おばあちゃんとともに特訓を重ね、遂にツール・ド・フランスに出場する。
しかし、シャンピオンがマフィアに誘拐されるという事件が勃発! おばあちゃんは最愛の孫を追い、愛犬ブルーノと共に大冒険を始める。
荒波を越えてたどり着いたのは、巨大都市ベルヴィル。伝説の3つ子ミュージシャンの老婆たちを味方につけると、人生経験と知恵そしてユーモアと“愛”で、数々の難局を乗り超えていく──。
本作品については、高畑勲が「突き放した人間描写に驚き呆れ、笑いながら超一流の表現を楽しむうちに、人生のほろニガさが惻々(そくそく)と伝わってくる」とコメント。
また、大友克洋は、「ノスタルジックアメリカのエンタテインメントに捧げられた、まったくフランス的な作品。その造形と表現の素晴らしさは驚きです!」と絶賛している。
『ベルヴィル・ランデブー』は、7月9日に公開される。
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