さびれた漁村に生まれ育ち、人生の喜びも知らず漫然と生きていた青年。刹那的に殺人を犯してしまった彼の姿を通じ、現代人の孤独を描いた小説『悪人』。直木賞作家・吉田修一のこのベストセラーが、『フラガール』の李相日(り・さんいる)監督、妻夫木聡主演で映画化され、6月24日にザ・ペニンシュラ東京で完成報告記者会見が行われた。
登壇したのは、李監督と妻夫木のほか、共演者の深津絵里、岡田将生、満島ひかり、樹木希林と、原作者で脚本も手がけた吉田、音楽を担当した久石譲。冒頭の挨拶で妻夫木は「原作を読んで、すごくこの役をやってみたいと思った。当たって砕けろと(製作会社にアプローチして)今に至るわけですが、初めて自ら望んで演じた役なので、思い入れも強かった」と作品への強い思いを吐露。
これまでの好青年イメージを覆す難役だが、「格好良く言うと“挑戦”かもしれないけど、違う自分に出会いたかった」と妻夫木。監督と共に、苦悩しながら役を作りあげていったという。また、深津は「撮影がホントに過酷で、記憶があまりない」と苦笑い。だが、妻夫木の集中力や真摯な姿勢に胸を打たれると同時に励まされ、「彼を見て、私も頑張れた」と話していた。
会見でほとんどの登壇者が口にしていたのが「監督のしつこさ」。妻夫木は「鬼のような演出(笑)」と語り、岡田も「監督は確かにしつこかった(笑)」とコメント。すると樹木が、「しつこいんじゃないんです。そこまでの完成度を求めているから」と“しつこさ”の中味を説明し、みんなが監督の求めるレベルまで達したと喜んでいた。
そんな樹木は、この日も本音トークが炸裂! タイトルと監督名だけで出演を決めたと言う彼女だが、妻夫木と深津が出演すると聞いて真っ先に『マジックアワー』が浮かんだそうで、「『マジックアワー』かぁ……」と思ったと渋い表情。「(樹木が出演した)『歩いても 歩いても』を撮影中、隣で『マジックアワー』を大々的に撮影していたけど、むこうは記者会見もいっぱい人が来て、こっちは小規模で人も全然来なくて(笑)。敵愾心とかはないんですけど、出来上がったものをチラっと見たら『ウ〜ン』って……(笑)」とあまり評価していない様子だったが、「でも、人間って変わるんですね〜」としみじみ語り、妻夫木と深津の今回の演技は評価しているようだった。
また、ギャラについても言及。「プロデューサーが『これは群衆劇で予算がないんですよ』って言うので、なぜ群衆劇だと予算がないのかよく分からなかったのですが、予算がないなりのギャラで決めさせてやらせていただいた(笑)。でも、出来上がったら作品が良いらしくて、どんどん規模が大きくなり、こんな立派なホテルで会見まですることになって……」と感慨深げで、ギャラも消費税分がプラスされていたと笑顔を浮かべた。
一方、いまや若手個性派女優の筆頭格とも言える満島も本音トークを展開。自らが演じた役について「この女の人は好きじゃないですね」とバッサリ。その理由については「みんなにいい顔をしたり媚びたりするために一杯ウソを貼り付けていたときの自分とそっくりで、すごくイヤで」と説明してから、「演じるときにも(心のなかの)イヤな部分を掘り出さなきゃいけなくて、監督に『違う、違う』と言われて、泣いたりしながらやってました」と撮影を振り返っていた。
『悪人』は、9月11日よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国東宝系にて公開される。
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