深津絵里が第34回モントリオール世界映画祭最優秀女優賞を受賞し注目を集めていた映画『悪人』。吉田修一の同名小説を映画化したこの作品が、9月11日に公開初日を迎え、妻夫木聡と深津、そして満島ひかり、樹木希林、柄本明、李相日監督がTOHOシネマズ 六本木ヒルズで舞台挨拶を行った。
『悪人』舞台挨拶で、妻夫木聡と深津絵里が互いの役者魂を絶賛!
衝動的な殺人を犯してしまった青年と、出会い系サイトで彼と出会った女性との愛を主軸に、日本社会の閉塞感をあぶり出していく。これまでの柔和なイメージを覆す難役に挑戦した主演の妻夫木は、冒頭の挨拶で早くも感極まりいきなり絶句。こみ上げる涙をこらえ、言葉を詰まらせながら「自分にとって転機となった作品。いろんなことに新しく挑戦した作品です。(撮影は)辛かったけれど、こうやって初日が迎えられ最高の気分。スタッフ、キャストが心をひとつにして作った作品で、1人でも多くの人に見てもらいたい。僕たちの熱意、日本映画の底力を感じていただければ」と、熱い思いを語った。
モントリオール映画祭には李監督、妻夫木、深津の3人が出席。現地の様子について聞かれた監督は、「映画に描かれた日本の社会背景がどこまで伝わるかと思っていましたが、上映中は誰一人スクリーンから目をそらさず、上映後、一拍間を置いてものすごい拍手をいただいたので、伝わったという実感が得られました」と作り手としての喜びを語った。
また深津も、授賞式前夜の公式上映の様子から「この作品の“熱”というようなものが、モントリオールの方々に届いているんだなという安心感を得た」とコメント。授賞式にはリラックスしてのぞんだが、フランス語での結果発表だったため受賞の瞬間は戸惑ったらしく「周りの反応で、『あぁ、賞をいただいたんだな』と……」と深津。受賞については「とんでもないご褒美をいただいた感じ」と感想を述べていた。また深津は「いただいた賞は、一切妥協を許さない監督の演出と、その監督にどんなことがあっても応え続けたスタッフのみなさん、そして妻夫木さんや共演者のみなさんと一緒に勝ち取った賞だと思っています。出来過ぎたくらいにスゴイ初日になってしまって、これ以上何かあったらバチが当たっちゃいそうです(笑)」と語った。
一方、監督の執念について語ったのが柄本。「本当に監督はしつこくて」と苦笑いする柄本は、撮影中に静かな口調で何度も何度もダメ出しする監督の様子を語ってから「シャクに障って、しまいにはもう口をきかなかったんですけど(笑)」と告白。樹木も監督のあまりの粘り強さについて、「優しい顔をしてすごいんですよ。若い女性はこういう人は捕まえないように。生活が壊れますから」と冗談めかして話していた。
舞台挨拶の最後には女優賞のトロフィーが登場。登壇者全員が順番に手にしたが、妻夫木は「いや〜、重いですね。みんなの思いが詰まっている重みだと思います」とコメント。深津も「この重みを忘れないようにしなくては、と思います」と感慨深げに語っていた。
『悪人』はTOHOシネマズ みゆき座ほかにて全国公開中。
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