8月7日、菅義偉首相の正体に迫るドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』の公開記念舞台あいさつが行われ、政治ジャーナリストの鮫島浩、内山雄人監督、河村光庸プロデューサーが出席した。
・菅政権に迫る『パンケーキを毒見する』満席続出を受け、劇場公開を拡大! 土日は若者の姿も
内山雄人監督、菅総理のお膝元・横浜での取材は難航「ことごとく断られまくった」
あえてオリンピック開催真っ只中に公開した本作。今回は、菅総理のお膝元である横浜の映画館で、今後の政権運営にも多大な影響を及ぼすと言われている横浜市長選挙公示前日に舞台あいさつを敢行した。
横浜での取材は難航したという内山監督は「映画を見るとわかりますが、まあ、ことごとく断られまくった現場です(笑)。それも皆『答えたいけれど、今はコロナで!』という断り方で、なかなか応じてくれなかった。変な忖度があった気がします。どういう風にこの作品を横浜の方がご覧になるのか楽しみです。また、菅さんも関わる市長選だけにその結果にも注目しています」と撮影当時を説明。菅氏が横浜の“影の市長”と呼ばれていることは撮影をするまでは知らなかったそうで「調べれば調べるほど、(横浜では)力を持っていることが分かった」と言い、ある種アウェーな場所での上映に感慨深そうな表情を浮かべた。
河村プロデューサーは「この映画を見て、何かの考えをもってもらえれば。明日からの横浜市長選挙でも菅さんは、IRの考えを見事に翻した。ある人に言わせれば、菅さんは『裏切りの政治家』と呼ばれていると言います。政治力学で動く政治家がトップで果たしていいのかをこの作品は問うてる」と強く訴える。
鮫島浩、菅総理は「しょせんはナンバー2の人」
オフレコの場でも面識がある鮫島は、菅総理の最初の印象について「15年前の菅さんは、安倍さんや麻生さんなどの大物とはまったく違う、どこにでもいるいち国会議員でした」と述懐。「菅さんは都市部の住民が喜ぶ政策を次々にやり、人気を得ました。風貌と違って、ある種のポピュリズムのところがある。世論に敏感な政治家でした」と初期の菅氏を分析。そして「一言でいうと、冷徹なリアリスト。情にほだされない。利害でモノを考えるので、信念はないんです」と現役総理の人間性を評した。
それこそ当初はパンケーキ愛好や令和おじさんなど人気が高かった菅総理だが、最近の支持率の急落は政権にも痛手だ。その誤算は東京五輪とコロナだったと鮫島は分析を続ける。「彼の読みでは五輪さえ強行開催すれば、必ず皆喜んでくれるだろう、支持率も上がるだろうと。そこに一貫性はあるんです。ただ、つい先日も広島でスピーチの一文を読み飛ばすことがありましたが、この人気の急落で精神的にも体力的にも参りつつあると思う。感染も拡大し、五輪でも支持率は戻らない。そうとう追い込まれているのでは」と指摘する。
また、鮫島さんは菅氏について「影の市長と言われていることでもわかりますが、しょせんはナンバー2の人」とバッサリ。「実はあまり批判されたことがなく、ここまで人生の非難の矢面に立つことはなかったんです。能天気で守る人がいてくれる世襲議員の安倍さんは気にしなかったけど、彼は良くも悪くも叩き上げで、誰かを隠れ蓑にのし上がってきた人ですが、今はむき出しの状態。この先の政治は、どう急展開してもおかしくない」と政局を憂う。
明日の市長選公示を前にプロデューサーの河村は「選挙が近いとマスコミは静かになる。客観的にしか報道しない。これは日本のマスコミの欠落です。マスコミとしての役割が今問われている。どこかに与するのではなく、横浜市がどうなるか堂々と問うべきだ」と問題を提起しつつ、行動しないマスコミの代わりに映画で是非を問う、と説明した。「私は選挙を意識した。この映画の争点は東京五輪であり、まさにど真ん中で公開しました。この映画を企画して始める時から決めていたことです。私の表現としては映画で影響を与えようとしましたが、今は映画こそ自由な表現ができる。皆さんは今日、貴重なお金を払っていただいて、この映画を見ていただいた。そこには自由があるが、なぜ映画しかできないのか! と思う」と力を込めた。