御年98歳の日本映画界の巨匠・新藤兼人監督が、最後の監督作と話す『一枚のハガキ』。開催中の東京国際映画祭コンペティション部門に出品されているこの映画の記者会見が10月27日に六本木ヒルズで開かれ、新藤監督、豊川悦司、大竹しのぶが登壇した。
[動画]『一枚のハガキ』東京国際映画祭 記者会見/新藤兼人監督、豊川悦司、大竹しのぶ
まずは新藤監督が「会場のみなさん、今日はありがとうございます。よろしくお願いします」と挨拶。続いて豊川が「この作品が東京国際映画祭に参加できることを大変うれしく思っています」と挨拶すると、大竹も「こんにちは。また新藤組でスタッフと一緒に1本の映画を完成させ、たくさんの方に見ていただけることがうれしいです」と話していた。
また、これが監督として最後の作品と明言していることに関する質問が寄せられると、新藤監督は自身の戦争体験も踏まえながら、これまでの60年間と映画監督としての原点について語った。
「この映画が最後だということは事実です。体が弱りましたし、頭も少し弱りました。それで、続けていくのも限界かと思って……。私は32歳の時に召集され、軍隊に行きました。それは兵隊としてではなく、予科練航空部隊が入ってくるのでその宿舎の掃除をしに行ったんです。掃除が済み任務が終わると、そのうちの60名がフィリピンに派遣されることになり、途中アメリカの戦艦に撃たれて海底に沈みました。
あとの40人のうち30人が潜水艦に乗って行きました。残った10名が宝塚歌劇団に、予科練が来るからと掃除に行ったんです。掃除が終わり、4人が機関銃士となって行きました。あとに残ったのは6人でした。そのうち戦争が終わり帰ってきたんです。ですから、100人のうちの94人が戦死し、その代表として私たち6人は帰ってきたわけです。94人の魂がずっと私につきまといまして、これをテーマにして生きてきました。
そこで独立プロを立てて、私の思いの映画を作って来たんです。泣いていては映画は作れないから、雨が降ろうが火が降ろうが、顔を上げて映画を作ってまいりました。泣いたことはありません。泣いていては映画は作れないから、泣かないでやってきました。地上を這いずり回るようにして、映画を作ってまいりました。そうするうちに60年ほど経ちまして、ふと気がつくと98歳になっていました。だから、これが限界かと思って宣言して、映画作りを降りる気でいます。
これからは映画のなかに生きていますけど、あとはわずかだと思いますから、映画のことを思いながら生きていきます。小さな映画人の小さな映画ですけれど、よろしくお願いします」
新藤監督、最後の作品となる『一枚のハガキ』は2011年夏にテアトル新宿ほかにて全国公開予定だ。
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