ローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得した塚本晋也監督の『鉄男』(89年)。その第2弾となる『鉄男II BODY HAMMER』が製作されたのが1992年、さらにそれから17年を経た2010年に、第3弾『鉄男 THE BULLET MAN』が公開され、話題を呼んだ。
最愛の息子を殺された怒りから“鋼鉄の銃器”と化した『鉄男 THE BULLET MAN』の主人公。彼とその妻の愛の軌跡を描いた本作について、塚本監督に話を聞いた。
[動画]『鉄男 THE BULLET MAN』予告編
『鉄男 THE BULLET MAN』作品紹介
──『鉄男II BODY HAMMER』から本作まで17年の歳月が流れたのですが、時間がかかった理由は何でしょうか?
監督:間隔を開けるつもりはなかったんです。『II』を作った後に「アメリカ版を作りませんか」という話をもらい、ぜひやりたいと思ったのですが、話し合いをしていくうちに「これはそう簡単にはいかなそうだな」と。そのときは、アメリカ版向けのいいアイデアもなくて、それを考えている間に時間が経っちゃったという感じです。
──結局、アメリカ版は作らなかったのですが、その理由は?
監督:なかなか、こちらが思ったような条件で話が進まなくて。アメリカの場合、合理的なストーリーを作らないといけないのですが、それがあまり面白いと思えなかったのが一番です。
──今回、メインの言語が英語ですが、なぜでしょうか。
監督:アメリカ版で『鉄男』を作るという話をいただいてから、そればかり考えていたので。最後に自主映画で作ることに決めたときは、半ばパロディ、半ばアメリカ映画へのオマージュを捧げるつもりで作りました。だから主人公もアメリカ人だし、目指すは『ブラック・レイン』! 冗談ですけど(笑)。
──以前、「すごく怖がり」と仰っていましたね。なのに、なぜこういう怖い作品を作るのですか?
監督:怖がりだから作るんじゃないですか。怖がりじゃないと、何が怖いのか分からない。ただ、『鉄男』は霊的な恐怖ではないので大丈夫なんです。僕にとっての怖さの限界は『悪夢探偵2』です。あのときは半分、腰が引けながら撮っていました。あれ以上怖いのは、ちょっと無理ですね(笑)。
──本作はとてもピュアで、愛に満ちた作品だと思ったのですが。
監督:今は結婚して子どももいるのですが、最初の『鉄男』を作ったときは結婚の“け”の字もない頃で、追求したのはエロと官能と破壊(笑)。でも、子どもができると、その子がどんな大人になるのかとても心配で、そのあたりの妄想を最大限に膨らませて作ったのが今回の作品なんです。
──今後も『鉄男』シリーズを作り続けたいと思いますか?
監督:頭の片隅にはあるのですが、もう「作る」とは言わない(笑)。作ると言うと、すぐに「いつ」と聞かれるので、言わないで突然作るほうがいいんだろうな、と(笑)。それに、もし作ると言ってなかなか作れないでいると、狼少年みたいになってしまうから。
──塚本監督が映画を作り続ける理由は何でしょうか。
監督:平たく言うと、面白いから。自分が考えていることを一番凝縮した形で表現できるので。あとは、子どもの頃から妄想癖があったのですが、その妄想が巨大なスクリーンに映され、自分の頭のなかで考えていたものを人が見て、喜んだり怖がったりしてくれるのが堪(こた)えられない。僕にとって、映画作りは、生存していることとほとんど一緒なんです。
──ほかの監督の映画やテレビドラマに俳優として出演もされていますが、監督をするときと俳優のときとで心境の違いはあるのでしょうか。
監督:作品に関わっているという点では同じなのですが、なんか違いますね(笑)。自分で監督するときは割と王様気分でやるのですが、俳優のときは奴隷気分ですね。
──どちらが心地よいのでしょうか。
監督:それぞれの良さがあります。多分、僕は本質的にMだと思うので、俳優も堪えられないのですが、映画作りが好きなので監督としてもやっていきたいんです。
『鉄男 THE BULLET MAN』のDVD&Blu-rayは11月4日より発売される。
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