ハンセン病のため50年間療養所暮らしを強いられてきた78歳の主人公が、かつてジャズに青春をかけた仲間たちとの約束を果たそうとする姿を描いた『ふたたび swing me again』。この映画が11月13日に公開となり、有楽町スバル座で行われた初日舞台挨拶に鈴木亮平、財津一郎、MINJI、藤村俊二、犬塚弘、塩屋俊監督が登壇した。
[動画]『ふたたび swing me again』初日舞台挨拶
これが映画初主演だった鈴木は「ハンセン病というテーマはまだまだ世界中に問題として残っているし、ジャズも国境を越えて伝わっていくもの。世界中の方々、それこそAPECで来日しているような方にもこの映画を見てもらえれば」と世界の首脳にも本作をアピールし、笑いを誘っていた。
藤村が語ったのは、この日の舞台挨拶が行われたスバル座ついて。「うちの親父が、戦後初めて封切り映画館を作ったのが、このスバル座。まさか、その舞台に立つとは思いませんでした」と意外な事実を語ると、映画については「みなさんがちゃんとご説明してくれたので」と前置きしてから「MINJIさんがキレイでした」と口にし、それを聞いたMINJIをはにかみさせていた。
本作で久々にウッドベースを演奏した犬塚は「僕は元々ジャズミュージシャン。クレージーキャッツの前に普通のジャズバンドで、よく銀座のナイトクラブで演奏していました」と、24歳当時のことを語り出した。その頃、出会ったのが、本作にも出演している世界的なジャズプレイヤーの渡辺貞夫で、一緒になってセッションをしたそう。「それから50数年。この映画でまさか一緒にセッションできるとは思わなかった。(渡辺と)ツーショットでセッションしたときなんて、もう最高で、目と目のあうんの呼吸でわかるんです。やってて良かったと思った」と久々のセッションを楽しんだ様子。
また財津は、初日を迎えた心境を「ありがたいこと。本当に感謝の気持ちでいっぱい」と話すと、「2010年の日本は厳しかった。うだる暑さで何人もの命が失われました。秋が来たと思ったら今度は水で攻められました。でも、今日初日は秋たけなわであります。どうか1つ、多くの方に、この映画を見ていただいて、ふと物思う良い秋にして……」と言うと、パンと手を打ち「チョーダイ!」と往年のギャグを交えて映画をアピールしていた。
そうしたなか、苦労を語ったのが塩屋監督だ。「この映画は5年間かかりました。ハンセン病(がテーマ)だということで、いろいろな差別を受けたし、ファイナンス(資金調達)も大変でした」と話すと、「財津さんを口説くのに3か月かかりました」とも明かした。また、主人公を演じた鈴木については「4年前のクランクイン直前に、この企画は一旦キャンセルされた。そのときの彼のすごく哀しそうな顔を覚えていて、絶対リターンマッチをやるぞということで、ここに来れた」と話し、感極まった表情を浮かべていた。
最後に司会から、今、手紙を書くとしたら誰に書きたいかという質問が。鈴木が「おじいちゃん」を挙げ、MINJIが「おじいちゃんとおばあちゃん」を挙げるなか、「おじいちゃんもおばあちゃんもとっくに逝っちゃったし、自分がおじいちゃんになっちゃったので」と客席を笑わす藤村が挙げたのが、9月に亡くなった谷啓。「僕はこの役をいただいたとき、これは谷啓さんだなと思った。もちろん、トロンボーンの名手でありますし、素敵な方だったので、先に逝った谷さんに手紙を書きます。『やらされるはめになった』ぞ」と語ると、場内は温かい拍手に包まれていた。
『ふたたび swing me again』は有楽町スバル座ほかにて全国公開中。
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