テレビの世界を舞台に、数々の人気番組を生み出し“天才”の名をほしいままにしてきたテリー伊藤が映画を初監督。テーマに選んだのは、キャラクタービジネスで10億円を稼ぐという未だかつてないプロジェクトだった──。
テリー伊藤自らがバイクやヴィンテージの洋服を売って軍資金300万円をゲット。一緒に活動してくれる5人のハローワークスと共にキャラクターを開発するところからドキュメンタリーが幕を開ける。そうして誕生したコウモリをベースにした新キャラクター「ナニティー7Oハート(ナニティーセブンオーハート)」を携え、テリー伊藤とハローワークス5人は10億円の売上を目指して走り回る。
そんな、これまでに見たことがないドキュメンタリー映画を企画・監督・主演したテリー伊藤に、企画立ち上げの狙いから、10億円の勝算についてまでを直撃した!
──いろいろなメディアがあるなかで、今回このテーマで映画で作ろうと思った理由をお聞かせください。
テリー伊藤:あんまり理由はないんですよね。やってみたいなと思って。まず、お金儲けが目的っていうのが面白いかなと。あと、ドキュメンタリーっていうと動物ものや、社会性のある問題を扱った作品が思い浮かぶかと思いますが、僕は楽しいテレビ番組を作ってきたので、暗いやつではなく、楽しいドキュメンタリーがあってもいいかなって思ったんです。それで1回目は、こんなテーマが面白いかなと思って作りました。
──最初から、テーマは予算300万円で“10億円稼ぐ“だったのでしょうか?
テリー伊藤:最初の企画書のタイトルが「10億円稼ぐ」です。でも、最初は10億円稼ぐってどうやるんだろうって(笑)。僕自身、そんなに金儲けがうまいわけではないから、どうしようかなと思っていた時期が1年くらいありましたね。
で、あるとき、ファッションが好きでよく原宿とかに遊びに行くんですけど、ファッション業界の人たちがみんな不景気なのに対し、キティちゃんやミッキーといったキャラクターグッズは相変わらず好調なのを見て、キャラクタービジネスはいけるなって思ったんです。成功した人を追っていくドキュメンタリーはあるけど、自分たちが挑戦していく作品はあまり聞いたことがないので、それなら面白いかなって。
──撮影が始まってからも試行錯誤が多かったのでは?
テリー伊藤:ほとんどそうですね(笑)。自分たちで作り上げた「ナニティー」というキャラクターを売っていくのですが、靴下業界はどうだろう? タオル業界は? 今は携帯電話の時代だから、携帯コンテンツはどうなっているんだとか、模索しながらやっていましたね。
ただ、ちょっと面白かったのは、この映画ではキャラクターを広めるために結成された女の子5人組ユニット「ハローワークス」と一緒に営業活動を続けていくのですが、一方で映画の作り手である演出家のテリーの視点もある点。営業的には苦労の連続でも、ドキュメンタリーとしては壁にぶつかった方が面白い。だから、キャラクタービジネスで大変だなと思ったときは、逆に監督の僕は「あ、面白いことにまた出会えた」と感じてる。そういう不思議な感覚はありましたね。
──映画を拝見していると、途中、なかなかキャラクタービジネスがうまくいきません。そんなとき、別のキャラクターにしとけば良かったといったように、「ナニティー」の将来性を疑ったことはありますか?
テリー伊藤:まったくないですね。僕はあんまり他人のせいにしないんですよ。自分で背負うように心がけています。今回も「ナニティー」云々じゃなくて、こっちの努力が足りないんだなと思うようにしていて。だって、最初に言い出したのは僕ですから。
──では、実際にキャラクタービジネスに挑んで見て、大変だなって思ったことは?
テリー伊藤:契約が決まりにくい点ですよね。こちらはキャラクターのライセンス契約をするわけじゃないですか。で、実際に商品を作るのは僕らじゃなく相手企業。何千、何万という数の商品を作るのにはお金がかかってしまうので、そういう意味では相手はすごくシビアですよね。なかなか会社の決済も通らないだろうし。
実際、350社くらいにコンタクトを取ったんです。で、決まったのは16社くらい。320社以上に断られているわけです。例えて言えば、就活中の大学生が300社の面接に落ちるようなもの。そうすると落ち込んできますよね。そういう苦労はありました。
──最終的には国内16社、海外11社と契約が結ばれたそうですが、テリーさん自身、どの段階からキャラクタービジネスに対する手応えを感じたのでしょうか?
テリー伊藤:最初からですね。そうじゃなかったら映画を作ってないです。負け戦を見せるのは、見ている人に失礼だと思いますし。
──じゃあ今後、目標だった売上10億円はいけると?
テリー伊藤:いけます!
──この企画で10億円稼げるってことは、どんどん映画を作っていけば、その分、大金持ちになれるわけですよね?
テリー伊藤:まあ、実際問題として僕にお金が入ってくるわけじゃないですからね(笑)。ただ、思いとしては、僕自身が稼ぐのではなく、映画を見てくれた人に、こういうお金儲けの仕方もあるんだってことを知ってもらいたいってことですね。だから1番嬉しいのは、この作品を見て「俺はテリー伊藤よりもっとでかいことがやれる」という人が出てくることですね。
──映画の大ヒットと「ナニティー」が10億円稼いでくれることと、どちらが大事でしょう?
テリー伊藤:どうなんだろうな? 先に映画でしょうね。映画が大ヒットすると、次を作るための実績になりますからね。そしたら次回作『20億円稼ぐ』も作れますから(笑)。
──じゃあ、映画のエンディングにあったように、次回作は本気で作る?
テリー伊藤:あれは本気です。ただし、2作目はもっとバカバカしく作りますけど。
──ちなみに映画を大ヒットさせるのは、とても難しいことなんですけど、もし3作目を作ることになったら、映画をテーマにして『30億円稼ぐ』というタイトルはどうでしょう?
テリー伊藤:いいですね。じゃあ、3作目はそれでいきます(笑)。
『10億円稼ぐ』はシネクイントにてレイトショー公開中。
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