1961年12月18日生まれ、愛知県出身。1987年、『男の花道』でぴあフィルムフェスティバルグランプリを受賞。PFFスカラシップ作品『自転車吐息』(90年)がベルリン国際映画祭に正式招待されたほか、各国の国際的な映画祭で上映される。『自殺サークル』(02年)、『紀子の食卓』(06年)といった問題作を放ち、注目を集める。以降、『愛のむきだし』(08年)、『冷たい熱帯魚』『恋の罪』(共に11年)、『ヒミズ』(12年)、『地獄でなぜ悪い』(13年)など、衝撃的な内容の作品を発表。今後、『ラブ&ピース』『新宿スワン』が2015年公開予定となっている。
近未来の日本を舞台に、大地震に続いて発生した原発事故が人々の生活を一変させる様子を描いた『希望の国』。『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』といった衝撃作で性や暴力といったタブーに挑み続けてきた鬼才・園子温が監督した話題作だ。
園監督が本作で挑んだのは“原発”というタブー。様々な困難を乗り越えてこの問題作を作り上げた監督に話しを聞いた。
監督:資金調達がこれまで以上に大変でした。やはり、今の日本では、こういう映画を作ることが困難なんだな、と。みんなで頑張って前へ進もうという作品なら違ったのかもしれませんが、暗部を見せるものにはみんな尻込みする。最終的に、海外資本の協力を得ることになりました。
監督:やはり、1本作って終わりというわけにはいかず、(『ヒミズ』の後で)次は真正面から“3.11以降”の映画を撮ろうと思いました。『ヒミズ』は3.11の直後だったので、津波と原発事故の2つのショックを受けて作ったのですが、時間が経つと、津波と原発事故はまったく別の問題だと思うようになり、今回は原発に関する映画が撮りたいと思いました。
監督:原発には復興の目処が立たないという問題があるからです。原発は誰にとっても重要な課題で、誰もが知っている事柄を深く掘り下げたかった。原発事故によって一家離散した方の話や、酪農家の方が自殺した話が報道されていましたが、ニュースやドキュメンタリーが記録するのは“情報”です。僕が記録したかったのは被災地の“情緒”や“感情”で、それを描きたかったんです。
監督:今回は、セリフもシーンも、想像力で書くことはなるべくやめ、取材した通りに書こうと思いました。勝手に書いた嘘は薄っぺらいだけですから。
監督:政治的な映画を作りたかったわけではありません。原発が良いか悪いかという映画を撮っても、あまり有効ではないような気がします。映画は巨大な質問状を叩きつける装置なので、取材してそこで起きていることを認識し、ただ映画にするだけで十分でした。センセーショナルなものとして描きたくはありませんでした。
監督:シナリオを書き始めたとき、結末が絶望へ向かおうが希望へ向かおうが構わないと思っていました。だから、わざわざ希望を見せようとは思いませんでしたし、取材したなかでも希望が沸くようなものはあまりなかった。ただ、目に見えるもののなかに希望はないかもしれないけれど、心のなかにはそういったものが芽生える可能性があると思っています。
監督:いや、自分では社会派という気持ちはそれほどありません。ただ、この映画を撮り終わったとき、まだこれで終わりにはできないと思いました。放射能の映画、福島の映画は、まだ撮っていかなければいけないな、と。3部作になるというわけでもないし、近いうちに次を撮るのか、それとも少し距離を置くのかも分かりませんが、今後もこのテーマを抱え続けていくんだろうと思います。
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