1956年7月9日生まれ、アメリカ、カリフォルニア州出身。俳優として数々の受賞歴を持つだけでなく、プロデューサー、監督としても活躍。ジョナサン・デミ監督の『フィラデルフィア』(93年)、ロバート・ゼメキス監督の『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94年)で2年連続アカデミー賞を受賞し、ペニー・マーシャル監督の『ビッグ』(88年)、スティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』(98年)、ゼメキス監督の『キャスト・アウェイ』(00年)で同賞にノミネートされる。
『クラウド アトラス』トム・ハンクス&ハル・ベリー インタビュー
3人の共同監督の下で6つの役を演じきったスターが語る仕事愛とは?
世界最高峰の文学賞ブッカー賞の最終候補にもなった「クラウド アトラス」は、新進気鋭の作家デイヴィッド・ミッチェルがしたためた物語で、時代を超えて
転生していく魂の旅路を描いた壮大な作品だ。
その映像化に挑んだのは、『マトリックス』シリーズ(99年〜03年)のラナ&アンディ・ウォシャウスキーの姉弟監督と、『ラン・ローラ・ラン』(98年)などを手がけたドイツで最も活躍する監督の1人、トム・ティクヴァ。そして、3人の共同監督の下に結集したのは、主演のトム・ハンクスをはじめ、ハル・ベリー、ヒュー・グラント、ペ・ドゥナら世界を股にかけて活躍する東西のスターたち。
彼らがそれぞれ、6つの時代を舞台に6つの役柄を演じていく。ガッチリとメイクを施され、誰が演じているのか分からない役柄もあるが、皆、さすがの演技力で演じきっている。そんな大仕事に挑んだトム・ハンクスとハル・ベリーに話しを聞いた。
ハンクス:まず、「ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァが電話で話したがっている」という電話をもらったんだ。彼らは「説明し難い脚本だけど、自分たちが撮りたいのはこういうことだ」って、複数の時代、複数のキャラクターについて話してくれ、脚本が送られてきた。
最初に読んだときの感想は、「なぜこんなにあちこち飛ぶんだ?」「また同じセリフ?」「今はどの時代?」「ここはどこだ?」って、多分、みんなが映画を初めて見たときの感想に近かったと思う。でもその後、すーっと納得がいったんだ。「ああ、そうか」と。話の展開のなかで検証されている複数のテーマにつながりがあるんだ。そして、長い脚本の最後のページを読む頃には、2000年代で開くひとつの扉について描いていることが分かる。それは次のシーンでは、1970年代で誰かがある部屋に入ってくる扉であり、それこそがストーリーのテーマへのつながりなんだ。
ハンクス:あれは魔法みたいだった。これがうまくいったのは、どのキャラクターに関しても、3日間ぐらいかけてメイク・テストと衣装合わせをやったからなんだ。次々にテストしていけたこともあれば、時間を置いてやったこともある。細かい部分を作り、それを試していったんだよ。
でも、これは僕ら2人にとって言えることなんだけど、衣装合わせの部屋へ入っていくと、1つのキャラクターに対し、6つか7つのバージョンが用意されていた。そして、監督、それぞれのチームのメイク部門リーダーであるジェレミー・ウッドヘッド、あるいはダニエル・パーカーと力を合わせ、パーツを取捨選択し、ゆっくりとそのキャラクターを創っていったんだ。それが終わると、鏡に映るのは別人。あれは特別な楽しみだったね。
そして8週間後、朝の5時45分にメイク室へ行き、実際の撮影用のメイクが始まる。そのあとは、できるだけ早く眠り込むようにするだけだ。そして目が覚めたら、ジャーン! ほら、ドクター・グースになっている(笑)。
ベリー:全部大好きだったわ。すべてのキャラクターを1つのものとして見ることが、とても好きなの。1849年の農園で働く年配のマオリ族になったかと思えば、2321年の進化した人間コミュニティーからの使者になったり。私が演じたのはとても幅広いタイプの人たちで、だからこそ、1人を選ぶのは難しいのよ。メイクや衣装を身に着け、彼らに生命を吹き込むのが楽しかったのにはそれぞれ理由があったから。
ハンクス:実際、僕たちはどのキャラクターも心から楽しんで演じたよ。残念ながら、1時間半ぐらいで撮影が終わってしまった役もあったけどね。
ベリー:監督たちは、私たちが皆、出演を承諾し、毎日撮影にやってきたことをとても喜んでいたの。だって、これは誰にとっても大金が入るような仕事ではなかったから。私たちは皆、このプロジェクトを愛し、何か斬新で、これまでになかった作品に加わりたかったから出演したのよ。それを実現させるには、多くの愛情と情熱が必要なの。まさに前代未聞のプロジェクトだから。だから、セットの全員から愛情が感じられたわ。誰もが互いに深い敬意をもっていたわね。
監督たちもひとつのビジョンでまとまっていた。実は私、出演を承諾した後でこう思ったの。「監督が3人だなんて、悪夢のような撮影になるかもしれない。すごく混乱するに違いないわ。誰の指示に従えばいいの? それに、これは私が望むような形の撮影になるの?」とね。
でも、実際は3人が完全に融合していた。撮影は2班に分かれていたけど、全員がいつも同じ認識で動いていたの。彼らの演出スタイルはとても違ってたわ。トム・ティクヴァは、撮影前にじっくり話す。一方、ラナとアンディは、まず俳優に演じさせてから、それを見たうえで、自分たちの感想と意見を言い、また撮影する。そんなふうに違ったけれど、3人が同じビジョンを持っていたの。自分たちがどんな映画を作っているのかがはっきり分かっていた。だから、どちらのセットでも、トーンや雰囲気はほぼ同じだったわ。
ハンクス:今でも演じることは楽しいし、喜びを感じる。その感覚は以前と全く変わってないし、僕の仕事は世界で最高の仕事だと思う。この仕事はすべてほかのアーティストたち、つまり共演者、脚本家、監督、そして大勢のスタッフたちと協力して行うものだ。人が用意した服を着て、自分以外の誰かのふりをするなんて、最高に楽しい時間の過ごし方だと思わない?
ベリー:私も同じ。私は大好きなことをして生活することができる。世の中には、残念なことに、私の友だちにも何人かいるけど、「あぁ嬉しい! 今日は金曜日」といつも言う人たちがいるわよね。でも私はそうじゃない。金曜でも日曜でも月曜でも気にしたことはないわ。とにかく演じることが楽しいの。今回の作品のように新しいことにも挑戦できるし、自分自身の能力を広げることもできる。もちろん、うまくいくときもあれば、いかないときもあるけど、それが俳優であるということなのよ。
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