1980年8月26日生まれ、アメリカ合衆国ロサンゼルス州生まれ。祖母、両親が俳優という芸能一家に育つ。テレビドラマ『ER/緊急救命室』や『CSI:マイアミ』などにゲスト出演した後、『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』(04年)で映画デビュー。さらに『スター・トレック』(09年)で主役のジェームズ・T・カーク役に起用され、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13年)で再び同役を演じる。また、『エージェント:ライアン』(14年)では“新生”ジャック・ライアンに扮した。舞台でも活躍している。主な映画出演作は、『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(07年)、『アンストッパブル』(10年)、『Black & White/ブラック & ホワイト』(12年)、『イントゥ・ザ・ウッズ』(14年)など。
昨年10月に急逝した世界的ベストセラー作家トム・クランシー。その最新作を映画化したのが、世界的ヒット作『エージェント:ライアン』だ。
本作は、「ジャック・ライアン」シリーズの誕生30周年となる節目の記念作で、経済アナリストからCIAにリクルートされたスパイ経験ゼロの主人公ジャック・ライアンが、天才的情報分析力で巨大な謎を解析し、9.11以後の全く新しい世界規模のテロに挑む姿が綴られていく。
主演は、ヒット作『スター・トレック』シリーズにも主演したハリウッドの期待の星クリス・パイン。彼に、『エージェント:ライアン』の見どころなどを語ってもらった。
パイン:子どもの頃から彼らの作品を見て楽しんできたし、スパイ作品も大好きだ。ハリソンには生来の謙虚さがあって、それが彼の仕事すべてに表れていると思う。『今そこにある危機』(94年)もそうだし、『パトリオット・ゲーム』(92年)もそうだ。『パトリオット・ゲーム』では、アン・アーチャーがポルシェに乗っていて、彼がフォルクスワーゲンのジェッタに乗っていた。彼が常に着ているような印象のあるツイードのジャケットを着てね。それが最高だった。
今回の作品に取り掛かった当初、(監督の)ケネス(・ブラナー)との会話で、映画では死やバイオレンスがこれほどたくさん描かれているにも関わらず、そこに関心を向ける作品はほとんどないという話が出た。悪役が死んだことはわかる。でもそんな悪人にも妻や子どもがいたかもしれない。悪役の背景が何もわからない、と話したんだ。そこでそうした側面を見せたら面白いんじゃないかということになった。平凡な男が非凡な状況に巻き込まれ、普段、決してやらないようなことをやらなければいけなくなったとき、彼は一体どうするのか。人の死を見るということに彼はどう対処するのか。それがとても面白いと思った。このジャンルの映画でそういう面が描かれた作品が思い浮かばないからね。人が殺される場面はあるけれど、その死が及ぼす影響まで描かれることはあまりない。この作品にはそういうヒューマンな側面があるんだ。
パイン:監督が俳優でもあることで助かるのは、僕ら役者がどんなことを経験しているか、監督が理解してくれていることだ。役者経験のない監督と比べると、より良いコミュニケーションがより楽にとれる場合が多い。
本作はアクション大作だけど、撮影時間は1日に11、12時間と比較的楽だった。それはケネスが過剰な撮影をしないおかげだ。彼は3台のカメラを使い、ブロッキングを行い、3、4ページにおよぶシーンを1日以下で撮り終えてしまう。それはとても珍しいことなんだ。とても才能のある監督だと思う。
パイン:ケネスが監督として参加する前から役をもらっていたんだ。オファーされたのは『スター・トレック』(09年)を撮り終えた直後だった。その時点では脚本を見ていなかったけれど、ジャック・ライアンは大好きなキャラクターだった。僕にとっては(『スター・トレック』の)カーク船長よりもずっと馴染み深いキャラクターなんだ。昔からスパイものが好きだったからね。やる、と即答したよ。
パイン:何らかの理由でジャック・ベンダーが降板したんだ。僕はジャックが大好きなんだけど、彼は他のことで忙しかったんだ。その後まもなく、ケネスが参加したと聞いて、賛成した。ずっと以前から彼のファンだったからね。俳優でもある監督のいいところは、役者がどういう気持ちでいるかを理解してくれる点だ。だから彼は、僕にどういう指示を与えたら一番いいかということを、かなり早く理解してくれた。意思疎通が早いんだ。彼にはやらなきゃいけないことがたくさんあったけれど、目的は明確だった。
パイン:残念ながら会えなかった。でも僕が演じているキャラクターは彼が作ったもので、僕がもう何年も前から大好きなキャラクターだ。このチャンスをもらえたことをとても感謝している。彼と会う機会があったらよかったんだけど……。
パイン:CIAで分析官をしていた人たちと話したところ、この映画のなかで使っている技術などがとてもリアルであるだけでなく、ストーリーの大きな部分を占めている金融テロというものが非常に時事的であることがわかった。ご存じのとおり、僕らが今生きている世界では、戦争やテロは実にさまざまな形をとる。また、金融システムは複雑を極めていて、きちんと理解するためには博士号が必要なほどだ。ジャックはその博士号を持っているけどね。とても恐ろしいよ。銀行から始まり、銀行の下に入る。現実に基づいたものだと思うけれど、実際にはあんなことが起きないことを願っているよ。
パイン:ジェームズ・ボンドにはQがいて、ジェイソン・ボーンには拳がある。ジャック・ライアンにあるのは頭脳だ。彼はごく普通の男だ。頭は切れるけどね。だから頭脳を使う世界や、知的なパズルを解き明かすことの方がずっと好きなんだ。でもどうしても前線に向かって引き込まれてしまうんだ。知性あふれる男ジャック・ライアンが、心身両面で非常に危険な状況から抜け出さなければならない。これは、死や陰謀といったスパイ・ジャンルの要素すべてに対処しなければならない男のストーリーなんだ。そういう男が、自分を愛する人たちを守るために暴力を振るわなければいけないことに、どう対処するかということが描かれている。彼にとって決してたやすいことではないんだ。
パイン:特に何もないんだ。大半は運だからね。この業界の移ろいやすさをちゃんと認識し、今自分が持っているものに感謝しなければいけないと思う。また、ドアの下にくさびを押し込んで、ドアを開けたままにしなければならないともね。ドアを開け、部屋のなかにできる限り長くとどまり、できる限りの仕事をしなければいけないんだ。
仕事のやり方は人それぞれだけど、僕の場合は、複雑で陰のある役者になりたいと思ってこの世界に入った。仕事をやればやるほど楽しい仕事だとわかるし、僕自身も楽しみたいと思っている。本当に最高に楽しい思いができるんだ。楽しみ、いい仕事をするよう努力し、人に親切にし、仕事をもらえることを願う。それが僕の哲学だよ。
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