1962年8月28日生まれ、アメリカのコロラド州出身。アニメーターを経てマドンナやローリング・ストーンズなどのミュージックビデオやCMを制作。『エイリアン3』(92年)で映画監督デビュー。主な監督作は『セブン』(95年)、『ファイト・クラブ』(99年)、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08年)、『ソーシャル・ネットワーク』(10年)など。
『ゴーン・ガール』デヴィッド・フィンチャー監督
幸せなカップルの知られざる秘密──男の女の真実、暴走するメディアを『ソーシャル・ネットワーク』の鬼才監督が斬る!
5回目の結婚記念日に突然失踪した妻。謎めいた事件に全米の注目が集まり、メディアの暴走が始まる。その結果、誰もがうらやむ幸せな夫婦の隠された素性が暴かれ、事件は意外な展開を見せる……。
『ファイト・クラブ』(99年)、『ソーシャル・ネットワーク』(10年)など独創的な作品作りで多くのファンを引きつけるデヴィッド・フィンチャー監督の最新作『ゴーン・ガール』は、幸せなはずのカップルの秘密を赤裸々に明かしていく刺激的なサイコロジカルスリラーだ。
アメリカで600万部超のベストセラーとなった小説を映画化したフィンチャー監督に、本作について語ってもらった。
監督:あの手この手の犯罪小説的な一面もよくできていて、陰謀の部分がおもしろかった。
原作者のギリアン・フリンが明らかにしてみせたのは、自分がどういう人物に見られたいかだけではなく、どういう人と一緒にいると思われたいかについても自己愛的な投影があることだった。夫婦のうちの一方が、「もううんざりした。あなたの夢に見る配偶者でいることに私はもう興味がない」と思った途端に、相手を強く恨むようになるのかもしれない。そういう見方は、現代的な人間関係のとらえ方のような気がする。
監督:ベン(・アフレック)はパーフェクトだった。他にその役をやれる人はいるかい? 彼の起用に文句をつける人は1人もいなかったんだ。ロザムンドは……これまで10年間に4、5本の映画で彼女を見てきたんだけど、彼女がどんな人なのかどうしても分からなかったんだよね。普通は、俳優を見たとき、本能的にどんな道具を持っているのかだいたいすぐに分かるんだけど。ロザムンドの場合は違った。休暇に何をやっているのかまるで分からなかったし、どこか不透明な部分があってそこが面白いと思ったんだよね。困惑するようなところがある人だと思ったんだ。
それで実際にセントルイスで会ってみて、3時間くらい話したんだ。そして、彼女を突然理解できたような気がしたんだけど、彼女に「兄弟はいるの?」って聞いたんだよね。そしたら、彼女は、「一人っ子」だと言って、子どもの頃のことを話してくれたんだ。そのときに、妻エイミーはそういう人でなくてはいけないと思ったんだよね。一人っ子だと、社交性を密封してしまうからね。
監督:全体としてどんな力学にしたいのかを想像してみるというかな。チームを作るみたいな感じなんだよね。ポイントガードができる人も必要だし、それより力強い人も必要だし。お互いがどのように作用し合うのかを考えるのが大事だと思うんだ。そこには、もちろん直感みたいなものもあるし、それから、本人が持っている本質で絶対に見逃せないようなものもあるからね。
監督:小説から映画の脚本にする過程で、非常に見事な転換がされている。これは全て、ギリアンのおかげだ。彼女は小説では、“互いに言い分の異なる話”であることを明らかにしてみせた。なぜなら、本では2人それぞれの考えていることが分かるからだ。彼らの頭のなかに入って、彼らが考えていること、本音を聞くことができる。でも、当然ながら、映画ではそういうことはできない。能動的で、ドラマティックに表現しなければならない。日記を使うことでエイミーの本心を知ることができるが、一方、ニックは観客の前では他の人の内面まで何でも知っている全知のように見せ、観客は彼の行動から、彼が感じていることや考えを理解しなければならない。彼は人の耳たぶをつかんで、親密な内容をささやいてくるわけではない。ここはとても扱いにくい部分だった。ギリアンはそこを理解して、表面上は同じに見えるストーリーを描くやり方を考え出し、しかも映画的にうまく行く方法だったので、とても感激した。
監督:映画は、真っ先に暴露することを扱い、2番目に、それを妥当とするのに十分な懲らしめについて描いている。我々が1番心配したのは、(原作者の)ギリアンが作り上げた非常にデリケートな魔法の本領を、ここで発揮させられるかどうかだった。つまり、この作品のうわべはスリラーという恐ろしげなものだが、実は人間関係や男女間の関係、それぞれが期待することについて際立った取り上げ方をしているんだ。
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