1984年4月5日生まれ、神奈川県横浜市出身。プロフットバッグプレイヤー。2014年にアジア人で初めてフットバッグの世界大会「第35回ワールド・フットバッグ・チャンピオンシップ」で優勝。世界でただ一人のプロフットバッグプレイヤーでもあり、パフォーマンス活動のほかにフットバッグをいかして高齢者を対象にしたトレーニングを行うなど、啓蒙活動にも力を入れている。石田太志公式サイト=http://www.taishiishida.net
「バッグ」と呼ばれる5cmほどのお手玉のようなボールを蹴り上げる競技「フットバッグ」で、世界唯一のプロプレイヤーにして2014年にはアジア人で初めて世界大会「第35回ワールド・フットバッグ・チャンピオンシップ」で優勝を果たした石田太志選手。
高速で華麗な脚さばきから繰り出されるパワフルかつ芸術的な技や甘いマスクで徐々に人気を集め、テレビ番組への出演も増えているほか、PVがYahoo!などで取り上げられ40万回も再生されるなど、今注目を集めている。
03年にスポーツショップで観た映像をきっかけにフットバッグを始め、11年には会社員を辞めてプロの道へ。そして、14年にはついに世界一達成へと飛躍を続ける彼に、これまでの過程や優勝後の変化、そして共感する映画まで語ってもらった。
石田:始めたのは2003年でした。小・中・高までサッカーを12年やっていて、大学に入ってからサッカーを続けようか悩んでいた時、たまたま入ったスポーツショップで見たフットバッグの映像がすごく格好良くて、衝撃を受けたのがきっかけでした。
石田:まだ日本ではほとんど周りにプレイヤーがいなかったので、サッカーのリフティングのように蹴って独学で練習したり、海外の映像をコマ送りで観てスタープレイヤーの動きを研究したりしていました。そのうち都内の公園で練習している人たちがいるのを発見して、そこで自分より1年先に練習していた方から教わったりと切磋琢磨していました。その後、大学を休学してカナダにワーキングホリデーで1年ほど行ってフットバッグの修行に励んだり大会に出場したりしました。
石田:大学を卒業後、アパレル会社に就職しましたが、フットバッグへの情熱が冷めず深夜12時くらいから練習して朝出勤する生活を送っていて、就職して3年半経ってプロになろうと決めました。11年、27歳のときです。(プロとして)フットバッグで生活をするのは世界中でも今までない道だったのでどうなるか分からなかったですが、誰もやっていなかったことに対して魅力を感じて。思い切ってプロへ転身し、色々なイベントでパフォーマンスをさせていただいたり、教える活動を始めました。
石田:両親もそうですけど、最初は「難しいんじゃないか」と言われましたし、よく笑われもしました。それでもいつかは結果を出して認めてもらえるようになろうと活動を一生懸命続けてきました。
石田:退職して最初に行ったのはスポンサー企業を探す活動でした。メールを何百通も送ったり、社長に手紙を書いて送り続けたりしていましたが、フットバッグというスポーツ自体が知られていなくて、自分の実績もなかったのでスポンサーはなかなか見つかりませんでした。それでも、物資を提供していただいたりイベントにパフォーマンスで出演させていただいたりすることによってフットバッグが人目に触れる機会が増え、パフォーマンスを見た方からイベントの依頼をいただいたりして、徐々にフットバッグで生活ができるようになっていきました。
石田:そうですね。(ある企業との)物資提供の交渉中に破断になってしまったことがあるのですが、担当の方から「フットバッグで生活するのは無理だと思いますよ」と言われたこともありました。その頃はまだ自分もフットバッグで生活を確立していなかったので、ちょっと心が折れそうになりました。
石田:フットバッグの可能性を信じていたからです。知る人が増え、プレイする人が増えれば魅力を感じてもらえるだろうな、と。
石田:優勝してからの変化は大きかったですね。これまで(2004年設立の)「日本フットバッグ協会」の設立メンバーで理事も担当し、フットバッグを広めていこうと活動していました。ただスポーツだけのアプローチだと広まりづらく、マイナーなスポーツは何かの“結果”がないと広まりづらいと感じていました。ですので途中から方法を変え、世界で結果を出せるような選手を出すことでフットバッグを知ってもらおうとやってきましたが、昨年の優勝によって様々な方面から注目されるようになりました。
石田:今までに1万人は体験してもらったと思います。ようやくここ1年くらいで(広がりに)実感を得られるようにはなっています。フットバッグは元々アメリカでお医者さんが膝を怪我した患者さんのリハビリとして考案されたのがきっかけなので、ほかのスポーツや高齢者の方々のリハビリ、子どもたちのサッカースクールに伺ってワンデースクールで全国各地を回ったりしています。以前は教える相手は1対1や10人以下でしたが、最近は100人規模だったりして、知っていただく機会は一気に増えました。
石田:アメリカとヨーロッパが主に盛んで、600万人ほどプレイヤーがいると言われています。向こうでは、公園でみんなで輪になって日本の蹴鞠(けまり)のように蹴るのが盛んです。
石田:30秒間でできるだけ多くの技を繰り出して得点を積み上げていく競技です。技の種類は2000種類以上もあり、大体、1つの技に1秒かかるので、30個の技を構成します。技のレベルが1から7くらいに分かれていて単純にそれを点数に換算して積み上げていく感じです。
石田:30秒間で早く多く、それでいて種類の違う技をすることが重要です。ミスして落としてしまうと最後の技はノーカウントになってしまいます。減点にはなりませんが、拾う動作で1〜2秒消化してしまうので、ミスをしないことが大事です。
石田:インサイドから片足でジャンプして最後に逆足のインサイドで終わる技があるんですけど、そういうパワー系と言われるような跳躍力が必要とされる技が得意だったりします。
石田:自伝的な映画を見ることが多いです。この人がどうやって生きてきたのかが描かれた実話をベースにしたようなものが好きで、最近印象に残ったのは『スティーブ・ジョブズ』という映画です。元々Appleという会社が好きで、他の方から色々な意見をもらいながらも自分の意見を貫き通す姿、人から反感を受けながらも自分のイメージしたものや気持ちを貫き通す気持ちの強さには、自分も人から色々言われたり最初はしましたし今でもありますけど、気持ちを強く持たないといけないなと、励まされるような印象を受けました。
石田:映像をご覧いただきましてありがとうございました。フットバッグというのは元々ダンスのようでリフティングの要素が強く非常にかっこいいものだと思っています。最初は難しいかもしれないですけど、みなさんこれからフットバッグに触れていただいて、プレーしていただければと思います。
(text&photo:中村好伸)
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